探査機JUICEとは?木星の氷の衛星ガニメデの海に挑むESAの旅

探査機JUICEとは?木星の氷の衛星ガニメデの海に挑むESAの旅 宇宙ニュース
ESA/Juice/JMC、画像処理 Simeon Schmauß(CC BY-SA 3.0 IGO https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/igo/ 、ESA経由) 2026年9月28日、地球スイングバイを終えて地球から遠ざかるJUICEの監視カメラ1が撮影した地球です。中央にアフリカ大陸の南部、その右にマダガスカル島が写っています。左側は探査機の一部です

木星のまわりには、表面が氷に覆われた大きな衛星がいくつもあります。その中で一番大きなガニメデは、惑星の水星よりも大きく、氷の下に海を隠していると考えられています。

そのガニメデを目指して、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機「JUICE」が旅を続けています。2026年9月28日には地球のそばを通って加速しました。この記事では、JUICEのこれまでの歩みと、ガニメデをめぐる謎を紹介します。

概要

JUICEは「Jupiter Icy Moons Explorer」の略で、日本では「木星氷衛星探査計画」とよばれています。ESAが主導し、日本のJAXAも参加しています。

目的は、木星と、氷に覆われた3つの衛星、ガニメデ、カリスト、エウロパを調べることです。どれも氷の下に海があると考えられていて、生命がすめる場所になりうるかが大きなテーマです。最後はガニメデを回る軌道に入る計画で、ESAによると、ほかの惑星の衛星を回る探査機はJUICEが初めてになります。

確かな事実として分かっていること

自分の磁場を持つ衛星ガニメデ

ガニメデは、1610年にガリレオ・ガリレイが観測した、木星の4つの大きな衛星の一つです。NASAによると直径は約5268キロメートルで、太陽系で一番大きな衛星です。表面は氷に覆われ、クレーターの多い暗い地域と、溝のような地形が走る明るい地域に分かれています。

1996年には、NASAの探査機ガリレオが、ガニメデが自分で磁場を作っていることを見つけました。自分の磁場を持つ衛星は、今のところガニメデしか知られていません。

オーロラが示した地下の海

ガニメデの磁場は、北極と南極の近くにオーロラを光らせます。木星の磁場の変化に合わせてオーロラの帯は揺れますが、氷の下に電気を通す塩水の海があれば、その揺れは小さく抑えられるはずです。

ドイツのケルン大学の研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡で、このオーロラを紫外線で観測しました。2015年3月にNASAが発表した結果によると、海がなければ6度ほど揺れるはずのオーロラが、2度ほどしか揺れていませんでした。地下の海を示す、それまでで最も強い証拠とされています。

NASAによると、海の厚さは約100キロメートルで、その上を約150キロメートルの氷が覆っていると見積もられています。水の量は、地球の表面のすべての水より多いかもしれません。

打ち上げとアンテナのトラブル

JUICEは2023年4月14日の日本時間午後9時14分、南米のフランス領ギアナから、アリアン5ロケットで打ち上げられました。前の日の予定は、雷の危険が高いため1日延期されていました。

探査機には10個の観測装置が積まれています。そのうちレーザー高度計「GALA」や、電波やプラズマの波を調べる「RPWI」など4つには、日本で開発した部品が使われています。

打ち上げの後、氷の下を探るレーダー「RIME」の長さ16メートルのアンテナが、一部しか開かないトラブルが起きました。小さなピンが引っかかっていたとみられ、3週間あまりの作業の末、5月12日に近くの解除装置を動かした衝撃でピンが数ミリ動き、無事に開きました。

世界初の月と地球の連続スイングバイ

JUICEはロケットの力だけでは木星まで届かないため、天体の重力を借りて向きや速さを変える「スイングバイ」を4回行います。燃料をほとんど使わずに済むので、その分を木星での観測にとっておけます。

最初は2024年8月でした。日本時間の20日朝に月のそばを、21日朝に地球の上空約6800キロメートルを通過しました。月と地球を続けて使うスイングバイは世界で初めてで、JUICEはこれでブレーキをかけ、金星へ向かいました。

2025年8月31日には金星のそばを通りました。その前の7月16日には、探査機の電波が地球で受け取れなくなりましたが、原因は16か月ごとにゼロに戻るタイマーのソフトウェアの不具合で、チームは約20時間かけて交信を取り戻しています。2025年11月には、太陽系の外から来た彗星「3I/ATLAS」も観測しました。

詳しくはこちら:恒星間天体3I/ATLASとは?よその星から来た彗星の正体

2026年9月の地球スイングバイ

2026年9月28日の日本時間午後8時45分ごろ、JUICEはインド洋の上空約8640キロメートルを通過しました。ESAによると、進む向きが約20度変わり、速さは秒速約3.5キロメートル上がりました。探査機のカメラは、遠ざかる地球のアフリカ大陸やマダガスカル島、小さな点のような月をとらえています。

語られている主な説

海は「サンドイッチ」になっているという説

以前は、1つの厚い海が上下を氷にはさまれ、海の底は高い圧力でできた氷に覆われているという見方が多くありました。2014年、NASAのジェット推進研究所の研究チームは、海と氷が何層も重なった「クラブサンドイッチ」のような構造かもしれないという計算の結果を発表しました。

塩を多く含む重い水が沈むため、一番下の岩石の上には塩水の層があるかもしれないといいます。水と岩石が触れ合う場所は生命の誕生に大切だと考えられていますが、これは理論上の結果で、確かめられてはいません。

巨大な衝突で自転軸が変わったという説

ガニメデの暗い地域には「ファロウ」とよばれる溝の地形が並んでいます。神戸大学などの研究チームは2020年、この溝がガニメデ全体に同心円状に広がる、巨大な衝突の跡だと発表しました。

2024年9月には神戸大学の研究者が、約40億年前に半径約150キロメートルの小惑星がぶつかり、ガニメデの自転軸が大きく変わったとする研究を発表しています。溝の中心が、木星の潮汐の力が一番強くはたらく方向と重なっていることが手がかりです。

核が今も作られているという説

ガニメデの磁場は、地球と同じように、中心の溶けた金属の核の動きで生まれていると考えられています。2026年5月、アメリカのカリフォルニア工科大学などの研究チームは、ガニメデは冷たい状態で生まれてゆっくり温まり、核が今も作られている途中かもしれないという計算の結果を発表しました。研究チームは、これまでの考え方を否定するものではないとしています。

今も残る謎

地下の海は強く示されていますが、直接確かめられたわけではありません。海の深さや厚さ、海の底が岩石と触れているのかも、まだはっきりしていません。

大きさや密度がよく似たカリストには、自分で作る磁場が見つかっていません。なぜガニメデだけが磁場を持つのかも、大きな謎の一つです。

これから期待されていること

JUICEは2029年1月に最後の地球スイングバイを行い、2031年7月に木星を回る軌道に入る予定です。ESAによると、その後ガニメデ、カリスト、エウロパのそばを合わせて35回通過します。

2032年7月にはエウロパのそばを2回通る計画です。エウロパには、NASAの探査機エウロパ・クリッパーも向かっています。

詳しくはこちら:木星の衛星エウロパの地下の海とは?探査機エウロパ・クリッパーが挑む謎

そして2034年には、ガニメデを回る軌道に入る予定です。ESAの計画では、高度5000キロメートル、500キロメートルと少しずつ下がり、最後は200キロメートルの軌道からも観測して、ガニメデに落下して運用を終える予定です。

その間、GALAは木星の潮汐の力で表面がどれだけ上下するかを測ります。海があれば数メートル以上、なければ1メートルほどと見込まれていて、海を確かめる大きな手がかりになると期待されています。

まとめ

JUICEは、太陽系最大の衛星ガニメデなど木星の氷の衛星を調べるため、2023年4月に打ち上げられたESAの探査機です。トラブルを乗り越えながら、スイングバイを重ねて木星への道を進んでいます。

ガニメデの海はどんな姿なのか、なぜ磁場を持つのか。2034年からのガニメデの周回観測で、その答えにどこまで近づけるのか注目です。

僕のひとりごと

僕が一番ワクワクしたのは、ほかの惑星の衛星を回る探査機はJUICEが初めて、という話です。16メートルのアンテナが小さなピン1本で開かなかったり、タイマーの不具合で交信が途絶えたりと、長い旅には思わぬことが起きるものですね。

それでも一つずつ乗り越えていくチームの粘り強さに、つい応援したくなります。2034年、JUICEがガニメデから届けてくれる景色が今から楽しみです。

参考情報

アイキャッチ画像:ESA/Juice/JMC、画像処理 Simeon Schmauß(CC BY-SA 3.0 IGO https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/igo/ 、ESA経由) 2026年9月28日、地球スイングバイを終えて地球から遠ざかるJUICEの監視カメラ1が撮影した地球です。中央にアフリカ大陸の南部、その右にマダガスカル島が写っています。左側は探査機の一部です

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