2020年12月、宇宙を旅してきた小さなカプセルが、オーストラリアの砂漠に降り立ちました。中に入っていたのは、地球から遠く離れた小惑星の砂や石です。
持ち帰ったのは、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」です。その試料の分析からは、生命の材料となる物質や、太陽系が生まれたころの水の手がかりが次々に見つかっています。この記事では、リュウグウの試料が教えてくれたことを紹介します。
概要
はやぶさ2は、2014年12月3日に種子島宇宙センターから打ち上げられ、2018年6月27日に小惑星リュウグウに到着しました。リュウグウに2回着地して試料を採取し、2020年12月6日に試料の入ったカプセルを地球に届けました。
持ち帰った試料は約5.4グラムで、目標としていた0.1グラムを大きく上回りました。試料は日本だけでなく世界中の研究者に配られ、今も分析が続いています。
確かな事実として分かっていること
2回の着地と人工のクレーター
JAXAによると、リュウグウは直径約900メートルの小惑星で、炭素を多く含むとされる「C型」に分類されます。はやぶさ2は、2019年2月22日に1回目の着地を行い、リュウグウの表面の物質を採取しました。
2019年4月5日には、弾丸のような装置をリュウグウにぶつけて、人工のクレーターを作る実験を行いました。そして7月11日の2回目の着地では、ふだんは表に出ていない地下の物質の採取に挑みました。
オーストラリアの砂漠に届いたカプセル
試料の入ったカプセルは、2020年12月6日に南オーストラリアのウーメラ砂漠に着地し、回収されました。カプセルは神奈川県にあるJAXAの相模原キャンパスに運ばれ、中から黒い砂粒のような試料が見つかりました。
試料は、地球の物質で汚れないように特別な施設で保管されています。2022年からは、世界中の研究者から研究の提案を募り、試料を配る取り組みも行われています。JAXAによると、最初の3回の募集だけで164件の研究が選ばれ、合わせて564.2ミリグラムの試料が配られました。
とても古く、水を含んだ物質
分析の結果、リュウグウの試料は、「CIコンドライト」と呼ばれる隕石の一種にとてもよく似ていることが分かりました。試料の半分ほどは、水を含む鉱物でできていました。
地球に落ちてくる隕石は、どうしても地球の環境で汚れてしまいます。宇宙から直接持ち帰った汚れていない試料は、太陽系ができたころの様子を調べるための貴重な手がかりになります。
23種類のアミノ酸
2022年6月には、リュウグウの試料から23種類のアミノ酸が見つかったと発表されました。アミノ酸は、生き物の体を作るたんぱく質のもとになる物質です。
この発見は、地球の生命を形づくる基本的な物質が、宇宙から運ばれてきたという考えを支える重要な手がかりとして注目されました。
結晶に閉じ込められた液体の水
2022年9月には、東北大学などの研究チームが、リュウグウの試料の結晶の中に、液体の水が閉じ込められていたと発表しました。その水は、塩や有機物を含んだ炭酸水でした。
この水は、リュウグウのもとになった大きな天体の中に、かつてあった水だと考えられています。研究チームによると、そのもとの天体は、太陽系ができてから約200万年後に、太陽から遠く離れた寒い場所で生まれた可能性があるといいます。
研究チームは、そのもとの天体は直径100キロメートルほどで、生まれてから300万年ほどかけて、50度くらいまで温まったと考えています。その後、直径10キロメートルほどの天体がぶつかって壊れたとみられています。持ち帰った試料は、包丁で切れるほど柔らかいことも分かりました。
RNAの材料ウラシルも
2023年3月には、北海道大学などの研究チームが、リュウグウの試料から「ウラシル」を見つけたと発表しました。ウラシルは、遺伝情報を伝えるRNAを作る材料の一つです。
同じ試料からは、ビタミンB3も見つかりました。表面から採った試料と、地下から採った試料の両方を調べたことで、小惑星の中で有機物がどのように分布しているのかも分かってきました。
はやぶさ2の今
はやぶさ2は、試料を地球に届けたあとも、新しい旅を続けています。2026年7月5日には、小惑星「トリフネ」のそばを通り過ぎながら観測する、フライバイ探査に成功しました。
はやぶさ2は、トリフネの中心から1キロメートルに満たない距離を、秒速約5キロメートルの速さで通過しながら撮影しました。公開された画像には、2つの岩がくっついたような、雪だるまのような形のトリフネが写っていました。JAXAによると、トリフネは長い方の差し渡しが約840メートルで、カメラなど4つの観測装置で調べられました。
はやぶさ2は、2027年12月に地球の重力を使って進路を変えたあと、2031年に小惑星1998 KY26に到着する予定です。
今も残る謎
リュウグウの試料から生命の材料が見つかったことで、地球の生命のもとが宇宙から運ばれてきたという考えは、より現実味を帯びてきました。しかし、それらの材料から、地球でどのようにして生命が生まれたのかは、まだ分かっていません。
試料はわずか5グラムほどですが、世界中の研究者が今も分析を続けています。これから先も、太陽系と生命の起源についての新しい発見が期待されています。
まとめ
はやぶさ2は、2020年12月に小惑星リュウグウの試料約5.4グラムを地球に届けました。分析からは、23種類のアミノ酸やウラシル、結晶に閉じ込められた液体の水などが見つかっています。
はやぶさ2は2026年7月に小惑星トリフネのフライバイに成功し、2031年の小惑星1998 KY26への到着を目指して旅を続けています。
僕のひとりごと
僕がこの話で一番すごいと思うのは、たった5グラムほどの砂粒から、生命の材料や太陽系が生まれたころの水まで見つかっていることです。宇宙から持ち帰った本物の試料だからこそ分かることがあるのだと、改めて感じました。
はやぶさ2が2031年に次の小惑星にたどり着くころ、どんな発見が待っているのか、今から楽しみです。
参考情報
- JAXA宇宙科学研究所「小惑星探査機「はやぶさ2」」
- JAXA宇宙科学研究所 地球外物質研究グループ「はやぶさ2|小惑星リュウグウ」
- ファン!ファン!JAXA!「小惑星探査機「はやぶさ2」が採取した小惑星Ryugu(リュウグウ)サンプルは約5.4グラム」(2020年12月18日)
- JAXA宇宙科学研究所「小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星Ryuguサンプル採取確認について」(2020年12月15日)
- アストロアーツ「「はやぶさ2」、リュウグウへ到着!」
- アストロアーツ「リュウグウ試料からアミノ酸などを検出」(2022年6月16日)
- JAXA宇宙科学研究所「炭素質小惑星リュウグウの形成と進化:リターンサンプルから得た証拠」(2022年9月)
- アストロアーツ「小惑星リュウグウに核酸塩基とビタミンが存在、過去には水による変性も」(2023年3月29日)
- JAXA はやぶさ2プロジェクト「小惑星トリフネのフライバイ探査に成功!」(2026年7月)
アイキャッチ画像:ISAS/JAXA(宇宙科学研究所の画像利用規定にもとづき使用) はやぶさ2のカプセルの中で見つかったリュウグウの試料を、スコープカメラで撮影した写真です

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