木星の衛星エウロパの地下の海とは?探査機エウロパ・クリッパーが挑む謎

木星の衛星エウロパの地下の海とは?探査機エウロパ・クリッパーが挑む謎 宇宙ニュース
NASA/JPL-Caltech/SETI Institute 探査機ガリレオが1990年代後半に撮影した画像を、2014年に人の目で見た色に近づけて作り直したエウロパの姿です

木星の衛星エウロパは、表面が一面の氷に覆われた天体です。ところがその氷の下には、地球の海よりもたくさんの水をたたえた海が広がっていると考えられています。

液体の水があるなら、生命がすめる環境があるかもしれません。この記事では、エウロパの海について分かっていることと、その謎に挑むNASAの探査機「エウロパ・クリッパー」の今を紹介します。

概要

エウロパは、1610年にイタリアのガリレオ・ガリレイが見つけた、木星の4つの大きな衛星の一つです。直径は約3100キロメートルで、地球の月より少し小さく、約3日半で木星の周りを1周しています。

NASAによると、氷の下の海には、地球の海全体のおよそ2倍の水があると考えられています。その海を調べるため、エウロパ・クリッパーが2030年4月の木星到着を目指して飛行を続けています。

確かな事実として分かっていること

ひび割れだらけの新しい氷の表面

1979年には、NASAの探査機ボイジャー1号と2号が木星のそばを通り、エウロパの表面が氷に覆われていて、筋のような模様が無数に走っていることを明らかにしました。

詳しくはこちら:ボイジャー1号・2号の今 打ち上げから49年、星間空間を旅する探査機

表面にはクレーターがとても少なく、表面が新しく作り直され続けていると考えられています。

磁場が示した塩水の海

海があることを強く示したのは、1995年に木星に着いたNASAの探査機ガリレオです。ガリレオはエウロパのそばを何度も通り、2000年1月3日には表面から約351キロメートルまで近づいて、磁場を測りました。

エウロパの周りでは、木星の磁場の向きが周期的に変わります。ガリレオの観測では、それに合わせてエウロパの周りの磁場の向きも変わっていました。これは、塩水の海のように電気を通すものの層がエウロパの中にあるときに起こる変化だと説明されています。

ガリレオは燃料が尽きかけた2003年9月21日、わざと木星に突入させられて運用を終えました。地球の微生物が付いたままエウロパに落ちて、海を汚してしまうのを防ぐためでした。

海が凍らない理由

エウロパの軌道は完全な円ではなく、隣の衛星イオやガニメデの重力の影響で、少しつぶれた形に保たれています。そのため木星との距離が変わり、エウロパは木星の強い重力で伸びたり縮んだりをくり返します。

この伸び縮みで内部に熱が生まれ、氷の下の水が液体のまま保たれていると考えられています。海の深さは60から150キロメートルほどと見積もられています。

表面に出てきた塩と二酸化炭素

2019年には、ハッブル宇宙望遠鏡などの観測で、エウロパの表面の黄色っぽく見える地域に、食塩と同じ塩化ナトリウムがあることが分かりました。場所は「タラ地域」と呼ばれる地域です。この塩は地下の海から来たと考えられ、海底で熱水の活動が起きている可能性を示すとされています。

2023年9月には、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、同じタラ地域で二酸化炭素を見つけたと発表されました。この炭素は隕石などで外から運ばれたものではなく、地下の海から比較的最近になって表面に出てきた可能性が高いとされています。炭素は、生命の体をつくる大切な材料の一つです。

ジュノーが測った氷の厚さ

氷の厚さについては、数キロメートルほどの薄い氷だという説から、数十キロメートルの厚い氷だという説までありました。2022年9月29日、木星を回るNASAの探査機ジュノーが、エウロパの表面から約350キロメートルまで近づき、氷をマイクロ波で観測しました。

2025年12月に発表された研究によると、観測できた範囲の氷の厚さは、純粋な水の氷だと仮定した場合で平均約29キロメートル(誤差プラスマイナス10キロメートル)でした。氷に塩が混じっていれば、これより5キロメートルほど薄くなるとされています。薄い氷の説より、厚い氷の説に近い結果です。

エウロパ・クリッパーの旅

エウロパ・クリッパーは、2024年10月14日(日本時間15日)に、フロリダ州のケネディ宇宙センターからスペースXのファルコンヘビーで打ち上げられました。NASAがほかの惑星に向けて作った探査機の中で最も大きく、広げた太陽電池パネルの端から端までは約30.5メートル、打ち上げ時の重さは約6トンあります。

木星の周りは放射線がとても強いため、エウロパを回る軌道には入らず、木星を回りながらエウロパのそばを49回通過する計画です。最も近づくときは、表面から25キロメートルほどまで迫ります。

2025年3月1日には火星のそばを通り、その重力を利用して進む向きを変えました。このとき、氷の中を探るレーダーの試験にも成功しています。次は2026年12月に地球のそばを通って勢いをつけ、2030年4月に木星に着く予定です。

語られている主な説

海底の熱水が生命を支えるという説

地球の深い海の底には、熱い水が噴き出す「熱水噴出孔」があります。太陽の光が届かなくても、そこでは化学反応のエネルギーを使う微生物を土台にした生き物たちが暮らしています。エウロパの海の底でも熱水の活動が起きていれば、同じような環境があるかもしれないという説があります。

日本の地球生命研究所の研究者たちも2020年、エウロパの海底を再現した実験で、熱水の反応によって生命のエネルギー源になる水素などが作られることを示しました。

表面の酸素が海に届くという説

エウロパの表面では、木星の周りを飛び交う電気を帯びた粒子が氷にぶつかり、水の分子がこわれて酸素が作られています。この酸素が海に運ばれれば、生命のエネルギー源になりうると考えられてきました。

ただし、2024年に発表されたジュノーの観測にもとづく研究では、作られる酸素は1秒あたり約12キログラムで、これまでの多くの見積もりより少ないという結果でした。ジュノーの氷の観測でも、表面近くの小さな割れ目やすき間は数百メートルほどの深さまでしかなく、それだけで酸素などを海まで運ぶのは難しいとみられています。

水が宇宙に噴き出しているという説

2013年12月、ハッブル宇宙望遠鏡の観測から、エウロパの南極付近で水蒸気が噴き出している兆候が見つかったと発表されました。2016年9月には別の研究チームが、エウロパが木星の前を横切るときの観測で、噴出らしきものを10回中3回とらえたと発表しています。

ところが2026年5月、2013年の発表を率いた研究者を中心とするチームが、過去のハッブルの観測をまとめて分析し直した結果を発表しました。エウロパの位置のわずかなずれなどを見直すと、噴出を示す信号ははっきりしなくなり、確からしさは99.9%から90%未満に下がったといいます。噴出がないと決まったわけではありませんが、確かな証拠とはいえなくなりました。

今も残る謎

一番大きな謎は、もちろんエウロパの海に生命がいるかどうかです。ただし、エウロパ・クリッパーは生命そのものを探す探査機ではありません。NASAは、氷の下に生命がすめる場所があるかどうかを確かめることを、このミッションの一番の目的にしています。

氷の厚さも、まだ決着したわけではありません。ジュノーが測ったのは表面の半分ほどの範囲で、冷たくて硬い外側の層の厚さです。その下にやわらかい氷の層があれば、氷の全体はさらに厚くなります。エウロパ・クリッパーは、氷の中を探るレーダーで氷の厚さを調べ、磁場の測定で海の深さや塩分を確かめる計画です。

海の物質がどのような仕組みで表面まで出てくるのかも、はっきりしていません。水の噴出が本当にあるのかどうかも、エウロパ・クリッパーがガスやちりを調べる装置で確かめる予定です。

まとめ

エウロパの氷の下には、地球の海の2倍ほどの水をたたえた塩水の海があると考えられています。磁場の観測や、表面で見つかった塩や二酸化炭素が、その手がかりです。

一方で、氷の厚さや水の噴出、生命がすめる環境かどうかは、まだはっきりしていません。2030年に木星に着くエウロパ・クリッパーが、49回の接近でその答えに迫ります。

僕のひとりごと

僕がいちばん心に残ったのは、探査機ガリレオが最後にわざと木星に飛び込んだ話です。海の存在を示した探査機そのものを、エウロパを守るために木星に沈めるという決断に、科学者たちの本気を感じました。

水の噴出の証拠が見直されたのは少し残念ですが、分からないことを分からないと認めるのも、科学の大事なところですね。2030年代、エウロパ・クリッパーがどんな答えを届けてくれるのか、今から楽しみです。

参考情報

アイキャッチ画像:NASA/JPL-Caltech/SETI Institute 探査機ガリレオが1990年代後半に撮影した画像を、2014年に人の目で見た色に近づけて作り直したエウロパの姿です

コメント

タイトルとURLをコピーしました