謎の閃光AT2018cow「カウ」とは?正体不明の明るく青い爆発

謎の閃光AT2018cow「カウ」とは?正体不明の明るく青い爆発 未解決ミステリー
NOIRLab/NSF/AURA/M. Garlick/M. Zamani(CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ ) 2023年に見つかったAT2018cowの仲間「フィンチ」(AT2023fhn)を描いた想像図です。銀河から遠く離れた場所で輝いた、明るく青い閃光を表しています

2018年6月、遠くの銀河で、まばゆい青い光が突然輝きました。その光は、わずか数日のうちに、ふつうの超新星の10倍以上の明るさに達しました。

この現象は、名前の最後の3文字から「カウ(牛)」と呼ばれています。世界中の望遠鏡が観測したにもかかわらず、何が光ったのかは今も分かっていません。この記事では、カウについて確かな事実と、語られている主な説を整理します。

概要

AT2018cow、通称「カウ」は、2018年6月16日に見つかった宇宙の突発的な現象です。ヘルクレス座の方向、約2億光年かなたにある銀河「CGCG 137-068」の中か、そのすぐ近くで起きました。

数日で一気に明るくなり、とても青く、超新星よりもずっと速く変化する。こうした性質を持つ現象は、「明るく、速く、青い、光の突発現象」を意味する英語の頭文字から「LFBOT」と呼ばれています。カウは、このタイプの代表とされる天体です。

星の爆発なのか、ブラックホールが星を引き裂いたのか。発見から8年がたった今も、研究者の意見は分かれています。

確かな事実として分かっていること

小惑星を探す望遠鏡が見つけた

カウを最初にとらえたのは、ATLASという観測網です。地球にぶつかるおそれのある小惑星を見つけるため、NASAの資金でハワイ大学が運用しています。2018年6月16日、ハワイにある望遠鏡が、それまで何も写っていなかった場所に明るい光を見つけました。

発見を伝えた第一報では、天の川銀河の中の星が、たまたま遠くの銀河と重なって見えているだけではないかとも考えられていました。ところが、その後の観測で、光の中にその銀河と同じ距離にあることを示す特徴が見つかりました。カウは、遠くの銀河で起きた現象だったのです。

「カウ」という名前は偶然

「AT2018cow」のATは、まだ正体が確かめられていない突発的な天体につけられる記号で、2018は発見の年を表します。最後の3文字は命名の決まりに沿って割り当てられたもので、それがたまたま英語で牛を意味する「cow」になりました。

その後に見つかった仲間にも、「コアラ」「ラクダ」「フィンチ(小鳥の一種)」「タスマニアデビル」「ウィペット(犬の一種)」と、動物の愛称がつけられています。

超新星の10倍以上の明るさ

カウは、わずか3日ほどで、ふつうの超新星の少なくとも10倍の明るさに達しました。その後、数か月かけて暗くなっていきました。

光を虹のように分けて調べると、最初のうちは、超新星でよく見られる元素の特徴がほとんど見えませんでした。温度は数万度ととても高く、飛び散った物質は、光の速さの約10%にあたる秒速3万キロメートルほどで広がっていたと見積もられています。やがて、水素やヘリウムの特徴が現れてきました。

カウは、目に見える光だけでなく、X線や電波でも明るく輝きました。NASAやESAの天文衛星から地上の電波望遠鏡まで、さまざまな望遠鏡が観測を行いました。

とてもまれな現象

似た性質の現象はそれまでにも見つかっていましたが、どれも遠すぎて詳しく調べられませんでした。カウは、比較的近い場所で、輝いている最中に見つかった初めての例でした。

カウのような現象は、とてもまれです。2023年に発表された研究では、その起こる割合は、重い星が一生を終えて起こす超新星と比べて、多くても0.1%ほどと見積もられました。2025年12月の時点で、見つかったLFBOTは十数個で、見つかるペースは1年に1個ほどです。

語られている主な説

超新星で中性子星やブラックホールが生まれたという説

2019年1月、アメリカ天文学会の会合で、2つの研究チームがカウの正体について異なる説を発表しました。

アメリカのノースウェスタン大学などのチームは、星が一生の終わりに崩れ、中性子星かブラックホールが生まれた瞬間を見たのではないかと考えました。生まれたばかりの天体に、まわりの物質が落ち込んで光ったというのです。

この説を後押しする観測もあります。2021年12月、マサチューセッツ工科大学(MIT)などのチームは、国際宇宙ステーションに取り付けられたNASAのX線望遠鏡NICERのデータから、カウのX線が約4.4ミリ秒(1000分の4.4秒)ごとに強弱をくり返していたと発表しました。この短い周期から、光の源は質量が太陽の1000倍に満たない小さな天体、つまり中性子星かブラックホールだと考えられるといいます。

2023年には、イギリスのシェフィールド大学などのチームが、光の振動の向きのかたより(偏光)から、爆発の一部が円盤のように平たい形をしていたと発表しました。星の中心部がつぶれてできた天体が、星の残りを飲み込んだ「失敗した超新星」ではないかという考えも示しています。

ブラックホールが星を引き裂いたという説

もう一つは、イギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究者を中心とするチームの説です。NASAの天文衛星スウィフトなどのデータから、太陽の10万倍から100万倍ほどの質量を持つブラックホールが、白色矮星という小さく重い星を引き裂いたと考えました。星がブラックホールに近づきすぎて引きちぎられる現象は「潮汐破壊」と呼ばれます。

ハッブル宇宙望遠鏡の観測では、発見から2年から4年たっても、カウの場所に紫外線で明るく光る光源が残っていました。2025年には、約5年後もほとんど暗くなっていない紫外線の光が、中くらいの重さのブラックホールが小さな星を引き裂いてできた円盤で説明できるとする研究が発表されています。

ブラックホールが相棒の重い星を壊したという説

2024年に見つかったAT2024wpp、愛称「ウィペット」は、これまでで最も明るいLFBOTです。約11億光年かなたで起き、カウの5倍から10倍も明るく、放ったエネルギーはふつうの超新星の約100倍に達しました。

2025年12月、カリフォルニア大学バークレー校などのチームは、太陽の最大100倍ほどの質量を持つブラックホールが、相棒だった太陽の10倍以上の重さの星を、数日のうちに完全に引き裂いたとする分析を発表しました。

今も残る謎

カウの正体が、超新星で生まれた中性子星やブラックホールなのか、ブラックホールによる潮汐破壊なのかは、まだ決着がついていません。

仲間の発見で、謎はさらに深まりました。2023年4月に見つかった「フィンチ」(AT2023fhn)は、ハッブル宇宙望遠鏡の観測で、近くの渦巻銀河から約5万光年、小さな銀河から約1万5000光年も離れた場所で起きていたと分かりました。

それまでのLFBOTは、どれも星が盛んに生まれている銀河の渦巻きの腕で見つかっていました。重い星は寿命が短く、生まれた場所から遠くへ移動できないと考えられるため、重い星の爆発では説明しにくい場所です。

2022年9月に見つかった「タスマニアデビル」(AT2022tsd)では、最初の爆発のあと、数か月のあいだに少なくとも14回、数分ほどで終わる強い閃光がくり返されました。2023年11月に発表した研究チームは、ブラックホールか中性子星が光を出し続けていると考えています。

LFBOTがすべて同じ仕組みで起きているのか、いくつかの種類が混ざっているのかも分かっていません。答えに近づくには、もっと多くの例を集めて比べる必要があります。2026年6月に10年がかりの観測を始めたチリのベラ・C・ルービン天文台は、こうした現象をもっと多く見つけると期待されています。

詳しくはこちら:ルービン天文台とは?世界最大のカメラが写した最初の宇宙と10年観測

まとめ

2018年6月に見つかったAT2018cow「カウ」は、数日でふつうの超新星の10倍以上の明るさに達した、青く熱い閃光でした。X線や電波でも明るく輝き、世界中の望遠鏡が観測しましたが、正体はまだ分かっていません。

超新星で中性子星やブラックホールが生まれた瞬間なのか、ブラックホールが星を引き裂いたのか。仲間の発見も続き、研究者たちは今も手がかりを集めています。

僕のひとりごと

小惑星を見張るための望遠鏡が、約2億光年かなたの不思議な爆発を見つけたという始まり方に、まずワクワクしました。名前はたまたま「牛」で、その後の仲間にもコアラやラクダと動物の愛称が続いているのが、なんだか楽しいです。それなのに中身は、生まれたての中性子星やブラックホールなのか、星を引き裂くブラックホールなのかという、とても壮大な話です。ルービン天文台が仲間をたくさん見つけて、この動物たちの正体が分かる日を楽しみに待ちたいと思います。

参考情報

アイキャッチ画像:NOIRLab/NSF/AURA/M. Garlick/M. Zamani(CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ ) 2023年に見つかったAT2018cowの仲間「フィンチ」(AT2023fhn)を描いた想像図です。銀河から遠く離れた場所で輝いた、明るく青い閃光を表しています

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