重力波の初検出とは?アインシュタインの予言から100年目の大発見

重力波の初検出とは?アインシュタインの予言から100年目の大発見 宇宙ニュース
NASA/Bernard J. Kelly (Goddard and Univ. of Maryland Baltimore County), Chris Henze (Ames) and Tim Sandstrom (CSC Government Solutions LLC) 2つのブラックホールが合体するときに生まれる重力波を表したシミュレーション画像です

宇宙で重い天体が激しく動くと、空間そのものがわずかに伸び縮みする波が広がっていきます。これが「重力波」です。およそ100年前、アインシュタインがその存在を予言しましたが、あまりにも小さな変化のため、長い間とらえることができませんでした。

2015年、アメリカの観測施設LIGOが、ついにこの重力波を直接とらえることに成功しました。この記事では、重力波の初検出と、そこから始まった新しい天文学の歩みを紹介します。

概要

重力波は、「時空のさざ波」とも呼ばれます。アインシュタインが一般相対性理論をもとに予言したもので、光や電波とはまったく違う方法で宇宙を調べる手がかりになると期待されてきました。

2015年9月14日、LIGOは、地球から約13億光年離れた場所で2つのブラックホールが合体したときに出た重力波をとらえました。発表は2016年2月11日(日本時間では12日)に行われ、2017年にはこの成果にかかわった研究者たちがノーベル物理学賞を受賞しました。

確かな事実として分かっていること

空間のほんのわずかな伸び縮みをとらえる

LIGOは、アメリカのワシントン州とルイジアナ州の2か所に置かれた観測装置です。L字型に伸びる長い2本の腕の中にレーザー光を通し、重力波が通り過ぎるときに生じる、腕の長さのわずかな違いを測ります。

その変化は、陽子の大きさの1000分の1ほどというとても小さなものです。高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、これを地球と太陽の間の距離の中で、水素原子1個ぶんの違いを見つけるようなものだとたとえています。

初めてとらえた重力波

2015年9月14日にとらえられた重力波は、太陽の36倍と29倍の重さを持つ2つのブラックホールが、ぐるぐる回りながら近づいて合体したときに出たものでした。合体してできたブラックホールの重さは、太陽の約60倍と見積もられています。

合体の前後で足りなくなった、太陽およそ3個分の重さにあたるエネルギーが、重力波として宇宙に放たれたと考えられています。重力波を直接とらえたのも、2つのブラックホールが合体する様子を観測したのも、これが初めてでした。

ちょうど100年目の発見

発表が行われた2016年は、アインシュタインが一般相対性理論を発表してから、ちょうど100年目にあたる節目の年でした。長い時間をかけて予言が確かめられたことは、世界中で大きなニュースになりました。

2017年のノーベル物理学賞は、LIGOの装置づくりと重力波の観測に決定的な貢献をしたとして、アメリカのカリフォルニア工科大学とマサチューセッツ工科大学の3人の研究者に贈られました。

重力波と光を同時にとらえた

2017年8月17日には、LIGOとヨーロッパのVirgoが、2つの中性子星が合体したときに出た重力波をとらえました。その約1.7秒後にはガンマ線のバーストも観測され、重力波と光の両方で観測された初めての天体現象になりました。

合体のあとには「キロノバ」と呼ばれる光の爆発も観測されました。キロノバの光は、合体で飛び散った物質の中で金やプラチナなどの重い元素が作られることで生まれると考えられています。

日本のKAGRAも観測に参加

日本では、東京大学宇宙線研究所などが中心となって、重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)を岐阜県飛騨市の山の地下に建設しました。1辺が3キロメートルのL字型の腕を持ち、2020年2月25日に観測を始めました。

KAGRAは、世界で4台目、アジアでは初めての重力波望遠鏡とされています。雑音を減らすために鏡をマイナス253度まで冷やすことも大きな特徴だと報じられています。

10年で見つかった重力波は200を超えた

LIGO、Virgo、KAGRAによる4回目の観測期間は、2023年5月24日から2025年11月18日まで続きました。この期間だけで、リアルタイムで約250の重力波の候補がとらえられています。

確かな重力波として確認されたものは、これまでに200を超えました。最初の3回の観測期間では合わせて90ほどだったので、観測できる数は大きく増えています。

これからの観測

2025年9月には、2025年1月14日にとらえた、これまでで最もはっきりした重力波の信号「GW250114」が発表されました。2015年の最初の重力波とよく似た、約13億光年先のブラックホールどうしの合体によるものです。

この信号の分析から、ブラックホールの表面積は合体しても減らないという、ホーキング博士が1971年に唱えた理論を強く支持する結果が得られました。装置の改良が進んだことで、10年前とは比べものにならないほどきれいなデータがとれるようになっています。

LIGO、Virgo、KAGRAの共同研究チームは、装置の点検や改良を行ったあと、2026年の秋ごろから約半年間の観測を行う計画だと発表しています。

今も残る謎

重力波の観測は、ブラックホールや中性子星が合体する様子を次々に明らかにしてきました。一方で、重力波と光の両方でとらえられた天体現象は、NASAの記事の時点では2017年の中性子星の合体の1例だけとされていて、同じような例がもっと見つかることが待たれています。

また、はっきりした信号がとれるようになったことで、アインシュタインの一般相対性理論が、ブラックホールのすぐそばという極端な環境でも成り立つのかを、より厳しく確かめられるようになりました。観測できる数が増えるほど、宇宙の成り立ちについて新しい発見が生まれると期待されています。

まとめ

2015年9月14日、LIGOは、約13億光年先で2つのブラックホールが合体したときに出た重力波を、史上初めて直接とらえました。アインシュタインの予言からおよそ100年後のこの発見は、2017年のノーベル物理学賞につながりました。

その後、中性子星の合体を重力波と光の両方でとらえることにも成功し、日本のKAGRAも観測に加わりました。重力波で宇宙を見る「重力波天文学」は、この10年で大きく花開いています。

僕のひとりごと

僕がこの話で一番驚いたのは、陽子の大きさの1000分の1ほどという、想像もつかないほど小さな変化を測れるようになったことです。100年前の予言を、人類が技術の力で確かめたというのは本当にすごいと思います。

日本の山の地下でもKAGRAが宇宙からの小さな揺れを待ち続けていると思うと、なんだか応援したくなります。

アイキャッチ画像:NASA/Bernard J. Kelly (Goddard and Univ. of Maryland Baltimore County), Chris Henze (Ames) and Tim Sandstrom (CSC Government Solutions LLC) 2つのブラックホールが合体するときに生まれる重力波を表したシミュレーション画像です

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