DART探査機の小惑星衝突実験とは?人類が初めて天体の動きを変えた日

DART探査機の小惑星衝突実験とは?人類が初めて天体の動きを変えた日 宇宙ニュース
NASA/Bill Ingalls 2021年11月23日(アメリカ太平洋時間)、DARTを載せてカリフォルニア州の宇宙軍基地から打ち上げられるスペースXのロケットです

もし、大きな小惑星が地球に向かってきたら、人類はどうすればいいのでしょうか。映画のような話ですが、実際にその方法を確かめる実験が行われました。

2022年9月、NASAの探査機「DART(ダート)」が、小惑星にわざと体当たりしたのです。この記事では、人類が初めて天体の動きを変えたこの実験について、分かっていることとこれからの調査を紹介します。

概要

DARTは、探査機を小惑星にぶつけて、その動きを変えられるかを確かめるためのNASAの探査機です。小惑星から地球を守る「地球防衛」の技術を、本物の小惑星で試した世界で初めての実験でした。

ねらったのは、直径780メートルほどの小惑星ディディモスの周りを回る、直径150から160メートルほどの小さな衛星ディモルフォスです。どちらの小惑星も、地球にぶつかるおそれはありません。

確かな事実として分かっていること

2021年11月に打ち上げ

DARTは、2021年11月23日(アメリカ太平洋時間)、アメリカ・カリフォルニア州の宇宙軍基地から、スペースXのロケットで打ち上げられました。日本時間では11月24日のことです。

2022年9月、小惑星に体当たり

DARTは約10か月の旅を経て、2022年9月26日(アメリカ時間)、日本時間では9月27日に、ディモルフォスに衝突しました。アストロアーツによると、衝突したときの速さは、小惑星に対して秒速約6キロメートルでした。

衝突の様子は、イタリア宇宙機関の小型衛星ライシアキューブが記録しました。地上の天文台に加えて、ハッブル宇宙望遠鏡やジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も、衝突のあとの様子を撮影しています。

公転周期が32分も短くなった

衝突の前、ディモルフォスは11時間55分かけてディディモスの周りを1周していました。2022年10月11日のNASAの発表によると、衝突のあとは11時間23分になり、およそ32分も短くなりました。誤差はプラスマイナス2分ほどで、世界各地の望遠鏡やレーダーによる観測で確かめられています。

NASAは、実験が成功したといえる変化を73秒以上と決めていました。実際の変化は、その25倍を超えるものでした。人類が意図して天体の動きを変えたのは、これが初めてです。

飛び散ったかけらが後押しした

衝突では、ディモルフォスの表面から大量のかけらが宇宙に噴き出しました。このかけらが反動で小惑星を押す力となり、探査機がぶつかっただけの場合よりも、大きく動きを変えることにつながりました。NASAなどの発表では、これを空気を噴き出して飛んでいく風船にたとえて説明しています。

2026年に発表された研究では、噴き出したかけらの効果を含めると、小惑星に伝わった勢いは、探査機がぶつかった勢いのおよそ2倍になったと報じられています。

太陽の周りを回る軌道まで変わっていた

2026年3月には、DARTの衝突が、ディディモスとディモルフォスの組み全体が太陽の周りを回る軌道まで、わずかに変えていたことが発表されました。2022年10月から2025年3月にかけて、二つの小惑星が遠くの星の前を横切る現象が世界各地で合計22回観測され、その記録などをもとにした研究です。

それによると、約770日かけて太陽を1周する公転周期が、およそ0.15秒短くなっていました。人の手で作ったものが、天体が太陽の周りを回る道筋を測れるほど変えたのは、初めてだとされています。

ヨーロッパの探査機ヘラが向かっている

DARTの実験の結果をくわしく調べるため、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機ヘラが、2024年10月7日に打ち上げられました。ESAによると、ヘラは2025年3月に火星のそばを通過し、ディディモスを目指して飛行を続けています。

ヘラは当初、2026年12月に到着する予定でした。ESAは2025年10月、予定を1か月早めて、2026年11月の到着を目指すと発表しています。ヘラには日本が提供した熱赤外線カメラも載っていて、JAXAは、日本の深宇宙用のアンテナとヘラとの通信試験にも協力しています。

語られている主な説

体当たりは地球を守る手段になるという見方

今回の結果から、探査機をぶつけて小惑星の軌道を変える方法は、地球を守る手段の一つになりうると考えられるようになりました。研究チームは、ほんのわずかな変化でも、時間がたてば、小惑星が地球に当たるか外れるかの違いにつながりうると説明しています。

小惑星の性質によって結果が変わるという見方

一方で、同じように体当たりしても、小惑星がどんな物質でできているか、中がどんなつくりになっているかによって、動きの変わり方は違ってくると考えられています。ヘラの観測は、小惑星の性質が軌道の変えやすさにどう関わるのかを知るうえでも、重要だとされています。

今も残る謎

DARTの衝突で、ディモルフォスにどんな形のクレーターができたのか、ディモルフォスの重さは正確にどれくらいなのかは、まだはっきり分かっていません。重さが分かれば、衝突の効果をより正確に見積もれるようになります。

ヘラは到着後、ディモルフォスの重さやクレーターの形、表面や内部のつくりを調べる予定です。本当に危険な小惑星が見つかったとき、どんな探査機をいつぶつければよいのか。その答えに近づくための調査が、もうすぐ始まります。

まとめ

DARTは、2022年9月に小惑星ディモルフォスに体当たりし、その公転周期をおよそ32分短くしました。人類が意図して天体の動きを変えた、初めての実験です。

その後の研究で、衝突の影響は太陽の周りを回る軌道にまで及んでいたことも分かりました。ESAの探査機ヘラが2026年の終わりごろに到着し、実験の結果をくわしく調べる予定です。

僕のひとりごと

僕がこの実験で一番驚いたのは、目標の25倍を超える変化が起きたことです。探査機一機の体当たりで、小惑星の動きがここまで変わるとは思っていませんでした。

映画の中の話だと思っていた地球防衛が、本当に試される時代になったのは心強いです。ヘラが到着して、ぶつかった跡がどんなふうに見えるのか、今から楽しみです。

アイキャッチ画像:NASA/Bill Ingalls 2021年11月23日(アメリカ太平洋時間)、DARTを載せてカリフォルニア州の宇宙軍基地から打ち上げられるスペースXのロケットです

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