ルービン天文台とは?世界最大のカメラが写した最初の宇宙と10年観測

ルービン天文台とは?世界最大のカメラが写した最初の宇宙と10年観測 宇宙ニュース
NSF-DOE Vera C. Rubin Observatory/NOIRLab/SLAC/AURA(CC BY 4.0) ルービン天文台が2025年6月に公開した最初の画像の1枚です。右上が三裂星雲、その下に大きく広がるのが干潟星雲で、678枚の画像を重ね合わせてつくられました

南米チリの山の上で、世界最大のデジタルカメラを積んだ望遠鏡が、毎晩のように夜空を撮り続けています。2025年6月に最初の画像を公開した「ベラ・C・ルービン天文台」です。

試験観測のわずか10時間ほどで、2000個を超える新しい小惑星を見つけたことでも話題になりました。この記事では、ルービン天文台の最初の画像と、2026年に始まった10年がかりの観測について、分かっていることを紹介します。

概要

ルービン天文台は、アメリカ国立科学財団(NSF)とアメリカエネルギー省(DOE)の支援でつくられた天文台です。チリのセロパチョン山の山頂にあり、口径8.4メートルの「シモニー・サーベイ望遠鏡」と、約32億画素の「LSSTカメラ」を備えています。

一番の目的は、南半球から見える空全体を、10年間にわたって何度も撮影する「LSST(Legacy Survey of Space and Time)」という観測です。同じ場所をくり返し撮ることで、夜空の移り変わりを記録した、宇宙のタイムラプス映像のような記録をつくろうとしています。

確かな事実として分かっていること

天文台の名前になった天文学者

天文台の名前は、アメリカの天文学者ベラ・C・ルービン(1928年から2016年)にちなんでいます。ルービンは銀河の回転の速さを調べ、目に見えない物質「ダークマター」が存在する有力な証拠を示した人物です。

詳しくはこちら:ダークマターとは?宇宙の4分の1を占める見えない物質の謎

この天文台は以前は別の名前で呼ばれていましたが、2019年12月、ルービンの名前を付けることがアメリカの法律で定められました。女性の名前を冠したアメリカの国立天文台は、これが初めてです。

世界最大のデジタルカメラ

LSSTカメラは、アメリカのSLAC国立加速器研究所のチームが設計し、組み立てました。これまでにつくられた中で最大のデジタルカメラで、大きさは小型の自動車ほど、重さはおよそ3トンあります。

1回の撮影で、満月およそ45個分の広さの空を写せます。望遠鏡は1晩に約1000枚の画像を撮り、南半球から見える空全体を3日から4日ごとに撮り直すことができます。2025年4月15日には、このカメラを取り付けた望遠鏡が、初めて夜空に向けた試験観測を行いました。

2025年6月に公開された最初の画像

2025年6月23日(アメリカ東部時間)、アメリカの首都ワシントンでの記者会見とインターネット中継で、ルービン天文台の最初の画像が公開されました。特に注目を集めたのが、いて座の方向にある三裂星雲(M20)と干潟星雲(M8)を写した画像です。この画像は、7時間あまりの間に撮った678枚の画像を重ね合わせ、地球から数千光年のところに広がるガスやちりの雲を、細かい模様まで浮かび上がらせました。

もう1つの代表的な画像は、おとめ座銀河団を写したものです。1100枚以上の画像からつくられ、約1000万個の銀河が写っています。それでも、ルービン天文台が10年間で撮影する予定の約200億個の銀河の、0.05%ほどにすぎません。

10時間で2104個の新しい小惑星

最初の画像の公開と同時に、約10時間の試験観測で、これまで知られていなかった小惑星を2104個見つけたことも発表されました。そのうち7個は地球に近づく軌道を持つ小惑星ですが、地球にぶつかる危険はないとされています。

地上や宇宙にあるほかの望遠鏡をすべて合わせても、新しく見つかる小惑星は1年に約2万個です。ルービン天文台は、LSSTの最初の2年間だけで、数百万個の小惑星を新たに見つけると見込まれています。

2026年6月に始まった10年間の観測

その後も、ルービン天文台は調整を兼ねた観測を続けました。2026年2月24日の夜には、夜空の変化を見つけて研究者に知らせる「アラート」の配信を始め、最初の夜だけで約80万件を送り出しました。将来は、1晩に最大700万件ほどになると見込まれています。

そして2026年6月30日、ルービン天文台は10年間のLSSTを始めたと発表しました。南の空のそれぞれの場所を10年間で約800回撮影し、夜空の変化をこれまでにない細かさで記録していきます。

本格的な観測の前の約1か月半の観測だけでも、新しい小惑星が1万1000個以上見つかりました。その中には、地球に近づく天体が33個、海王星より外側を回る天体が380個ふくまれています。

試験観測のデータから生まれた発見

2026年1月には、ワシントン大学などのチームが、2025年春の試験観測のデータから、とても速く回る小惑星を見つけたと発表しました。「2025 MN45」という仮の名前で呼ばれるこの小惑星は、直径が約710メートルもあるのに、わずか1.88分で1回転しています。

直径500メートルを超える小惑星の中では、これまでに見つかった最も速い自転です。研究チームは、これほど速く回ってもばらばらにならないことから、ふつうの岩のようにとても強くまとまった天体だと考えています。

2025年7月に見つかった恒星間天体3I/ATLASも、実は発見の約10日前から、ルービン天文台の画像に写っていました。調整中の観測でたまたまとらえていたもので、彗星らしいガスやちりの広がりが、早い時期から高い解像度で確かめられました。

詳しくはこちら:恒星間天体3I/ATLASとは?よその星から来た彗星の正体

これから期待されていること

ルービン天文台には、4つの大きな目標があります。ダークマターとダークエネルギーの謎に迫ること、太陽系の小さな天体を調べ上げること、明るさや位置が変わる天体を見つけること、そして天の川銀河の地図をつくることです。

たとえば、たくさんの銀河の形や分布を調べることで、ダークマターの広がり方や、宇宙の膨張に対するダークエネルギーの影響を探ります。また、地球にぶつかるおそれのある小惑星を、これまでよりずっと多く見つけられると期待されています。

太陽系のはるか外側に未知の惑星が隠れているという「プラネット・ナイン」仮説についても、ルービン天文台の観測で決着がつくのではないかと、研究者の間で期待されています。

詳しくはこちら:プラネット・ナインとは?太陽系の果てに第9惑星は隠れているのか

日本の研究者も、この計画に参加しています。国立天文台や東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の研究者が、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(HSC)の開発や運用の経験を生かして協力しており、日本の研究者はLSSTのデータを優先して使える権利を得ています。

今も残る課題

大きな課題の1つが、夜空を横切る人工衛星です。低い軌道を回る人工衛星が視野を横切ると、画像に光の筋が残ってしまいます。

ルービン天文台によると、約4万機の人工衛星を想定した計算では、LSSTの画像の約10%に少なくとも1本の筋が写り、日没後や夜明け前の薄明の時間帯には、大半の画像に写ると見積もられています。天文台は、画像の中の筋を自動で見つけて解析に影響しないようにする仕組みを取り入れ、人工衛星の多い方向を避ける観測の工夫も検討しています。

また、ルービン天文台が最初の1年で集めるデータは、ほかのすべての光学望遠鏡がこれまでに集めた量を上回るとされています。この膨大なデータから、世界中の研究者がどれだけの発見を引き出せるのかも、これから問われていきます。

まとめ

ルービン天文台は、2025年6月に最初の画像を公開し、10時間ほどの試験観測で2104個の新しい小惑星を見つけて、その力を示しました。2026年2月にはアラートの配信を始め、6月30日には10年間のLSSTを始めたと発表しています。

南の空をくり返し撮影するこの観測は、身近な小惑星から遠い銀河、そしてダークマターの謎まで、幅広い分野に新しいデータを届けていくと期待されています。

僕のひとりごと

僕が一番驚いたのは、10時間ほどの試験観測だけで、2000個を超える新しい小惑星が見つかったことです。しかも、まだ誰も気づいていなかった恒星間天体まで、調整中の観測でこっそり写していたと知って、ワクワクしました。

ダークマターの証拠を示した天文学者の名前を持つ天文台が、そのダークマターの謎に挑むというのも、すてきな巡り合わせだと思います。同じ空を10年間撮り続けた先に、どんな宇宙の変化が見えてくるのか、これからのニュースを追いかけるのが楽しみです。

参考情報

アイキャッチ画像:NSF-DOE Vera C. Rubin Observatory/NOIRLab/SLAC/AURA(CC BY 4.0) ルービン天文台が2025年6月に公開した最初の画像の1枚です。右上が三裂星雲、その下に大きく広がるのが干潟星雲で、678枚の画像を重ね合わせてつくられました

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