UFOと人間ではない遺体を回収?元情報将校が語った米下院公聴会

UFOと人間ではない遺体を回収?元情報将校が語った米下院公聴会 UFO・UAP
Architect of the Capitol(パブリックドメイン、Wikimedia Commons経由) アメリカ議会の建物を管理する議会建築監が2011年に公開した、ワシントンのレイバーン下院議員会館の写真です。2023年7月の公聴会はこの建物で開かれましたが、公聴会当日の写真ではありません

アメリカ政府は墜落したUFOを回収していて、乗っていた人間ではない存在の遺体まで持っている。2023年7月、そんな話が、アメリカ議会の公聴会という公式の場で、宣誓のうえで語られました。

証言したのは、元空軍の情報将校デービッド・グルーシュ氏です。この記事では、公聴会で何が語られ、政府がどう答えたのかを、確かな事実と本人たちの主張を分けて整理します。

概要

公聴会は2023年7月26日、下院監視委員会の「国家安全保障・国境・外交小委員会」が、ワシントンのレイバーン下院議員会館で開きました。題名は、日本語にすると「未確認異常現象(UAP):国家安全保障、公共の安全、政府の透明性への影響」です。

証人は3人でした。元海軍中佐のデビッド・フレイバー氏、元海軍の戦闘機パイロットのライアン・グレーブズ氏、そしてグルーシュ氏です。開催には、共和党のティム・バーチェット議員とアンナ・パウリナ・ルナ議員が力を入れていました。

2022年5月には、国防総省などの幹部が証言するUAPの公開の公聴会が、半世紀ぶりに下院で開かれていました。2023年の公聴会は、元パイロットや内部告発者が直接語る場になりました。

確かな事実として分かっていること

証言したのはどんな人か

グルーシュ氏が公聴会に提出した冒頭の陳述によると、同氏は14年間、情報将校として働きました。空軍での階級は少佐で、2021年から2023年までは国家地理空間情報局(NGA)で、UAPの分析の共同責任者を務めたといいます。

また、2019年から2021年までは空軍の予備役として国家偵察局(NRO)に所属し、国防総省のUAPタスクフォースのメンバーでした。2019年には、タスクフォースの責任者から、任務に必要な機密の計画をすべて洗い出すよう命じられたとしています。

証言の中心は職務の中で知らされた話

グルーシュ氏の主張の中心は、何十年も続くUAPの墜落機の回収とリバースエンジニアリング(分解して仕組みを調べること)の計画があると、職務の中で知らされたというものです。その計画の情報に触れる許可は認められなかったといいます。

同氏は、この件を上司や複数の監察官に報告し、情報機関の監察官に内部告発の申し立てをしたと述べています。そのために報復を受けたとも主張しましたが、具体的な中身は調査中だとして語りませんでした。主張は2023年6月に報道で明らかになっていました。

議員の質問への答え

政府はUAPを持っていると思うかと問われると、グルーシュ氏は、4年間で40人以上の証人に聞き取りをした結果として、間違いなく持っていると答えました。政府が人間ではない存在の活動を知ったのはいつかという質問には、1930年代だと答えています。

墜落した機体の乗員の遺体はあるのかと問われると、一部の回収では生物由来のものも見つかったと答えました。それが人間ではないというのは、計画を直接知る人たちの見立てだったといいます。ただし、遺体を自分で見たことはないとも認めています。

隠ぺいのために傷つけられた人を知っているかという質問には、知っていると答えました。物体がある場所も知っていて監察官に伝えたとしましたが、詳しい中身は公開の場では話せず、機密を扱える非公開の場でなら話せるとくり返しました。

パイロットたちの証言

グレーブズ氏は、2014年ごろからバージニア州の沖の訓練空域で、正体の分からない物体がたびたびとらえられていたと証言しました。ある訓練では、透明な球の中に暗い灰色の立方体が入ったような物体が空域の入り口に浮かんでいて、2機の戦闘機は回避して訓練を打ち切ったといいます。

同氏は、似た体験を打ち明けてきた民間機の乗員や元軍人が30人以上いるとし、目撃は珍しいものではないのに、安心して報告できる仕組みがないと訴えました。

詳しくはこちら:米国防総省が公開した3本のUFO映像と秘密計画AATIPとは

フレイバー氏は、2004年に出会った物体の技術は、当時のアメリカのどんな技術よりもはるかに優れていたと証言しました。

詳しくはこちら:ニミッツ事件とは?米海軍パイロットが追った白い「チックタック」UFO

国防総省の反論

国防総省の報道官は、地球外の物質を持つ計画や、それをリバースエンジニアリングする計画が過去や現在にあったという主張を裏付ける、確かめられる情報は見つかっていないと説明しました。情報を提供したために傷つけられたり殺されたりした人がいるという情報もないとしています。

公聴会の翌日には、国防総省でUAPを調べる全領域異常対策室(AARO)の所長だったショーン・カークパトリック氏が、個人の立場でSNSに投稿しました。主張を裏付ける信頼できる証拠はまだなく、主張の中心となる人物はAAROと話すことを拒んできたという内容です。

記録の公開をめぐる法案

同じ2023年7月、上院では民主党のチャック・シューマー院内総務と共和党のマイク・ラウンズ議員らが、UAPに関する政府の記録を公開させる修正案を、国防権限法に加えるよう提案していました。公開を判断する独立した委員会を作るもので、ケネディ大統領暗殺の記録を公開させた法律をお手本にしていました。

しかし、2023年12月に議会がまとめた最終的な国防権限法では、この委員会などが削られました。残ったのは、国立公文書館が政府のUAPの記録を集め、適切なものを公開する仕組みです。シューマー氏らは、下院の反対で削られたと批判しました。

語られている主な説

政府が人間ではない存在の機体を隠しているという主張

グルーシュ氏は、政府が人間ではない存在の機体を回収し、議会の監視が届かないところで調べているという立場です。宇宙人ではなく人間ではない存在という言い方をするのは、どこから来たのかを決めつけないためだと、公聴会で説明しています。

証拠が示されていないという批判

科学者からは、証拠がなければ判断できないという声が相次ぎました。NASAのUAP研究チームの一員だったボストン大学の教授は、写真や物などの確かめられる証拠が示されておらず、本人も物体を見たり触れたりしていないと指摘しています。ノースイースタン大学の物理学者も、細部があいまいで信用しにくいという趣旨を語りました。

同じ話がくり返されているだけだという見方

2023年12月にAAROを去ったカークパトリック氏は、2024年1月に科学誌サイエンティフィック・アメリカンへの寄稿で、秘密の計画の話は、つながりのある少数の人たちが同じ話を伝え合う「循環報告」の典型だという見方を示しました。

今も残る謎

グルーシュ氏の主張の多くは機密にかかわるとされ、公開の場では確かめようがありません。2024年1月12日には、情報機関の監察官が下院の小委員会に非公開で説明しましたが、議員の受け止めは、前進があったという声と、答えが得られないという声に分かれました。

AAROとグルーシュ氏の話も食い違っています。情報公開請求で出てきたAAROの記録では、2023年11月に予定した聞き取りにグルーシュ氏が来なかったとされています。一方でグルーシュ氏は、AAROが機密の情報を扱う権限についての疑問に答えていないと反論しています。

2024年3月には、AAROが歴史報告書で、政府が地球外の技術を調べているという主張に確かな証拠はないと結論づけました。

詳しくはこちら:米政府は宇宙人の技術を隠しているのか 国防総省の歴史報告書

議会では、その後も2024年11月と2025年9月に、UAPについての公聴会が開かれています。2026年6月9日にも、グルーシュ氏は議員たちと記者会見に出て、秘密の計画のために巨額の資金が議会から隠されているという趣旨を訴えたと報じられていますが、裏付けとなる証拠は示されていません。

まとめ

2023年7月26日の下院の公聴会で、元情報将校のグルーシュ氏は、政府がUAPの墜落機を回収し、人間ではない生物由来のものも見つかっていると知らされたと、宣誓のうえで証言しました。ただし、本人は自分で見たわけではなく、詳しい中身は公開の場では語られませんでした。

国防総省とAAROは、主張を裏付ける証拠はないと反論しています。議会では記録の公開を求める動きが続いていますが、主張が本当かどうかを公に確かめる手段は、今もありません。

僕のひとりごと

僕がこの公聴会で一番考えさせられたのは、宣誓という重みのある場で語られた話でも、その中身の多くが、ほかの人から聞いた話だったというところです。本人が真剣でも、証拠が公開の場に出てこなければ、僕たちには確かめようがありません。

それでも、パイロットたちが安心して報告できる仕組みがないという訴えは、宇宙人がいるかどうかとは別に、大事な問題だと感じました。結局のところ、非公開の場で語られたことが、いつか確かめられる形で出てくるのかどうか、僕はそこを見守りたいと思います。

参考情報

アイキャッチ画像:Architect of the Capitol(パブリックドメイン、Wikimedia Commons経由) アメリカ議会の建物を管理する議会建築監が2011年に公開した、ワシントンのレイバーン下院議員会館の写真です。2023年7月の公聴会はこの建物で開かれましたが、公聴会当日の写真ではありません

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