ダークマターとは?宇宙の4分の1を占める見えない物質の謎

ダークマターとは?宇宙の4分の1を占める見えない物質の謎 未解決ミステリー
NASA, ESA, M.J. Jee and H. Ford (Johns Hopkins University) ハッブル宇宙望遠鏡の画像に、重力レンズから求めた銀河団のダークマターの分布(青いリング)を重ねたものです

夜空に輝く星や銀河は、宇宙のほんの一部にすぎません。宇宙には、光を出さず、光をはね返すこともないのに、重力だけを及ぼす見えない物質があると考えられています。

それが「ダークマター(暗黒物質)」です。存在を示す証拠は数多く見つかっているのに、その正体はまだ誰にも分かっていません。この記事では、確かな事実と語られている説を分けて整理します。

概要

ダークマターは、光などの電磁波では観測できず、重力を通してだけ存在が分かる物質です。現在の宇宙の中身のうち、ダークマターはおよそ27%を占めると考えられています。

一方で、星や惑星、私たちの体など、原子でできた「ふつうの物質」は、わずか5%ほどしかありません。残りの約68%は「ダークエネルギー」と呼ばれる、こちらも正体の分からないものです。

確かな事実として分かっていること

銀河団の中の速すぎる銀河

ダークマターの存在を最初に示したのは、スイスの天文学者フリッツ・ツビッキーでした。1930年代、ツビッキーはかみのけ座銀河団を観測し、銀河が目に見える物質の重力だけでは説明できないほど速く動いていることに気づきました。

このままでは、銀河団はばらばらに飛び散ってしまうはずです。ツビッキーは、見えない物質の重力が銀河団をつなぎとめているのではないかと考えました。

回転の速さが変わらない銀河

1970年代には、アメリカの天文学者ヴェラ・ルービンらが、アンドロメダ銀河などの回転の速さを詳しく調べました。ふつうに考えると、銀河の外側の星は、中心の近くの星よりもゆっくり回るはずです。

ところが観測の結果、銀河の星は中心からの距離によらず、ほぼ同じ速さで回っていました。この結果は、銀河が目に見えない大量の物質に包まれていることを示す、強い証拠になりました。

光を曲げる見えない重力

重い天体の重力は、その後ろにある遠くの銀河の光を曲げます。これを「重力レンズ」といい、光の曲がり方を調べると、見えない物質がどこにどれだけあるのかを描き出すことができます。

2007年には、ハッブル宇宙望遠鏡の観測から、ある銀河団のダークマターの分布が描かれ、リングのような形の構造が見つかりました。このほかにも、宇宙マイクロ波背景放射と呼ばれる宇宙誕生のころの光の観測や、銀河の分布を広く調べた観測が、ダークマターの存在を裏付けています。

ぶつかった銀河団が示した証拠

2006年、NASAのチャンドラX線観測衛星などの観測から、二つの銀河団がぶつかった「弾丸銀河団」で、ダークマターとふつうの物質が分かれている様子がとらえられました。X線で光る高温のガスは衝突でブレーキがかかったのに対し、重力レンズで分かった質量の中心は、その先へと進んでいたのです。

ダークマターは、重力以外ではほとんど何とも反応しないため、衝突で止まらずにすり抜けたと考えられています。この観測は、ダークマターが実在することを示す直接的な証拠として発表されました。

地下深くでの正体探し

ダークマターの正体を突き止めるため、世界中で、ダークマターの粒子をとらえようとする実験が行われています。日本でも、岐阜県の神岡の地下で、東京大学宇宙線研究所のXMASS実験が、ダークマターの直接検出を目指してきました。

アメリカでは、サウスダコタ州の地下1マイル近い場所で、10トンの液体キセノンを使うLZ実験が行われています。2025年12月に発表された結果では、ダークマターの有力な候補とされる粒子の証拠は見つからず、その性質をさらに絞り込む世界で最も厳しい制限が得られました。

語られている主な説

未知の重い粒子「WIMP」だという説

最も有力な候補の一つが、WIMP(ウィンプ)と呼ばれる粒子です。重さはあるものの、ふつうの物質とはほとんど反応せずにすり抜けてしまうと考えられています。

地下の実験の多くは、このWIMPが原子にぶつかるわずかな反応をとらえようとしています。しかし、これまでのところ、はっきりした信号は見つかっていません。

とても軽い粒子「アクシオン」だという説

もう一つの候補が、アクシオンと呼ばれる、とても軽い未発見の粒子です。一つ一つは軽くても、数がけた違いに多いため、全体として大きな重さになると考えられています。

宇宙の初めにできたブラックホールだという説

ビッグバンのあとの早い時期にできたとされる「原始ブラックホール」が、ダークマターの正体ではないかという考えもあります。ただし、原始ブラックホールそのものが、まだ見つかっていません。

重力の法則のほうが違うという考え

見えない物質を考えるのではなく、とても大きな範囲では重力の働き方そのものが違うのではないか、という考えもありました。ただし、弾丸銀河団の観測は、こうした考えでは説明が難しい結果だとされています。

今も残る謎

ダークマターが重力を及ぼしていることは、さまざまな観測で確かめられています。しかし、それがどんな粒子なのか、あるいは粒子ではない何かなのかは、今も分かっていません。

2025年6月には、ダークマター研究の先駆者の名前をとったチリのヴェラ・C・ルービン天文台が、最初の画像を公開しました。口径8.4メートルの望遠鏡で空を広く調べ、ダークマターの謎にも迫ると期待されています。

まとめ

ダークマターは、光では見えないのに重力を及ぼす謎の物質で、宇宙の中身のおよそ27%を占めると考えられています。銀河の動きや重力レンズ、ぶつかった銀河団などの観測が、その存在を裏付けています。

一方で、正体についてはWIMPやアクシオンなど、さまざまな候補が挙げられていますが、まだ決着していません。地下の実験や新しい望遠鏡による観測で、正体探しは今も続いています。

僕のひとりごと

僕がこのテーマで一番ふしぎに思うのは、私たちが知っている物質が、宇宙のたった5%ほどにすぎないということです。身の回りのものすべてが少数派だと思うと、宇宙の見え方が少し変わってきます。

見えないものの存在を、星の動きや光の曲がり方から確かめていく科学者たちの粘り強さにも、胸が熱くなります。いつか正体が分かる日が来たら、きっと宇宙の教科書が書き換わるのだと思います。

アイキャッチ画像:NASA, ESA, M.J. Jee and H. Ford (Johns Hopkins University) ハッブル宇宙望遠鏡の画像に、重力レンズから求めた銀河団のダークマターの分布(青いリング)を重ねたものです

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