ブラックホールの初撮影とは?地球サイズの望遠鏡がとらえた「影」

ブラックホールの初撮影とは?地球サイズの望遠鏡がとらえた「影」 宇宙ニュース
Event Horizon Telescope Collaboration(CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ 、Wikimedia Commons経由) 2019年に発表された、銀河M87の中心にあるブラックホールの画像です

ブラックホールは、光さえも抜け出せないほど強い重力を持つ天体です。そのため、長い間「見ることはできない天体」だと考えられてきました。

ところが2019年、世界中の電波望遠鏡をつないだ国際チームが、ブラックホールの姿を史上初めて画像でとらえたと発表しました。この記事では、ブラックホールの初撮影と、その後に続いた新しい発見を紹介します。

概要

ブラックホールを撮影したのは、「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」と呼ばれる国際的な観測プロジェクトです。世界各地の8つの電波望遠鏡をつなぎ合わせ、地球と同じくらいの大きさの仮想的な望遠鏡として観測しました。

2019年4月10日、研究チームは、おとめ座の方向にある銀河M87の中心のブラックホールを撮影したと発表しました。2022年には、私たちの住む天の川銀河の中心にあるブラックホールの撮影にも成功しています。

確かな事実として分かっていること

8つの電波望遠鏡で作った地球サイズの望遠鏡

EHTには、チリのアルマ望遠鏡など、チリ、スペイン、ハワイ、メキシコ、アメリカのアリゾナ州、南極にある8つの電波望遠鏡が参加しました。観測は2017年4月に行われ、波長1.3ミリメートルの電波でブラックホールを狙いました。

離れた場所にある望遠鏡のデータを組み合わせることで、非常に細かいところまで見分けられるようになります。国立天文台によると、その細かさは人間の視力に置きかえると300万にもなるといいます。

史上初めてとらえたブラックホールの「影」

2019年4月10日、研究チームは世界6か所で同時に記者会見を開き、M87の中心にあるブラックホールの画像を公開しました。M87は地球から約5500万光年離れた銀河で、中心のブラックホールの重さは太陽の約65億倍とされています。

画像には、明るいリングに囲まれた暗い部分が写っていました。この暗い部分は「ブラックホールシャドウ」と呼ばれ、ブラックホールの周りで輝くガスの光が、強い重力で曲げられることで生まれる影です。

アインシュタインの理論とぴったり一致

観測で分かったリングの大きさや形は、アインシュタインの一般相対性理論にもとづく予想と、とてもよく一致していました。ブラックホールの存在を、画像で直接示した初めての成果です。

国立天文台によると、リングの見かけの大きさは、月の表面に置いた野球のボールを地球から見るくらいの小ささです。プロジェクトには200人を超える研究者が参加し、日本からも、国立天文台の本間希樹教授(発表当時)らが加わりました。

ブラックホールの周りの磁場を画像に

2021年3月には、同じM87のブラックホールについて、光の偏り(偏光)を調べた画像が発表されました。この画像から、ブラックホールのすぐ近くに、そろった向きの磁場があることが分かりました。

M87の中心からは、ジェットと呼ばれる強力なガスの噴き出しが伸びています。磁場の画像は、ブラックホールがどのようにジェットを生み出しているのかを探る手がかりとして注目されました。

天の川銀河の中心のブラックホールも撮影

2022年5月12日には、天の川銀河の中心にあるブラックホール「いて座Aスター」の画像が発表されました。地球から約2万7000光年の距離にあり、重さは太陽の約400万倍です。

いて座Aスターの周りのガスは、数分ほどで一周するほど動きが速く、観測中にも姿が激しく変わります。そのため画像にするのが難しく、発表はM87の画像より3年ほど遅れました。M87のブラックホールよりはるかに軽いものの、地球からの距離が近いため、リングの見かけの大きさは同じくらいでした。

磁場の向きが年ごとに変わっていた

2025年9月には、2017年、2018年、2021年の観測を比べた研究が発表されました。M87のブラックホールの周りの磁場は、2017年にはある向きにうずを巻いていましたが、2018年には落ち着き、2021年には逆向きにうずを巻いていたのです。

一方で、リングの大きさは年がたっても変わっていませんでした。これは、ブラックホールの影が一般相対性理論の予想どおりであることを、改めて裏付ける結果です。

この研究では、ジェットの根元から出る光の手がかりも初めてとらえられました。マックス・プランク協会によると、2021年の観測にはアリゾナ州とフランスの望遠鏡が新たに加わり、画像の質が高まったといいます。

これからの研究

EHTは、同じブラックホールを何年にもわたって観測することで、ブラックホールの周りの変化を追いかけています。磁場の向きが年ごとに変わっていたという発見は、ブラックホールの周りが思っていたよりずっと活発に動いていることを示しました。

参加する望遠鏡が増えれば、画像はより鮮明になります。研究者たちは、観測を重ねることで、ブラックホールがガスを吸い込み、ジェットを噴き出す仕組みにせまろうとしています。

今も残る謎

ブラックホールの影の大きさは、一般相対性理論の予想とよく合っていることが確かめられてきました。しかし、ブラックホールがどのようにして強力なジェットを生み出しているのか、その仕組みはまだ完全には分かっていません。

磁場の向きが年ごとに大きく変わる理由も、これから解き明かされるべき謎です。ブラックホールのすぐそばで何が起きているのか、観測による探究はまだ始まったばかりといえます。

まとめ

2019年、世界の8つの電波望遠鏡をつないだイベント・ホライズン・テレスコープが、銀河M87の中心にあるブラックホールの影を史上初めて画像でとらえました。2022年には天の川銀河の中心のブラックホールも撮影され、どちらもアインシュタインの理論とよく一致していました。

その後も、周りの磁場の画像や、磁場の向きが年ごとに変わる様子などが明らかになっています。「見えない天体」だったブラックホールは、今では少しずつその素顔を見せ始めています。

僕のひとりごと

僕が一番すごいと思うのは、世界中の望遠鏡をつないで、地球と同じくらいの大きさの望遠鏡を作ってしまったというアイデアです。月の上の野球のボールほどの小さなリングを写し出したと聞くと、人類の技術の力に胸が熱くなります。

日本の研究者も参加していると知って、なんだか誇らしい気持ちにもなりました。次はどんな姿のブラックホールが見られるのか、楽しみにしています。

アイキャッチ画像:Event Horizon Telescope Collaboration(CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ 、Wikimedia Commons経由) 2019年に発表された、銀河M87の中心にあるブラックホールの画像です

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