宇宙は、ビッグバン以来ずっと膨らみ続けています。その膨らみ方は、宇宙の中の物質の重力にブレーキをかけられて、だんだん遅くなっていくと考えられていました。
ところが1998年、その予想をくつがえす発見がありました。宇宙の膨張は、遅くなるどころか速くなっていたのです。この記事では、宇宙を加速させている正体不明の「ダークエネルギー」について、確かな事実と語られている説を分けて整理します。
概要
ダークエネルギーは、宇宙の膨張を加速させていると考えられている、正体の分からないエネルギーです。空間そのものを外側へ押し広げるような働きをしていると説明されています。
NASAによると、ダークエネルギーは宇宙全体の中身のおよそ7割を占めています。前の記事で紹介したダークマターと合わせると、宇宙の中身の大部分は、正体の分からないもので占められていることになります。
確かな事実として分かっていること
遠くの超新星が予想より暗かった
1998年、二つの研究チームが、遠くの銀河で起きた「Ia型超新星」という星の爆発を観測しました。Ia型超新星は、本来の明るさがよく分かっているため、見かけの明るさと比べることで、そこまでの距離を測ることができます。
観測の結果、遠くの超新星は予想よりも暗く見えていました。つまり、予想よりも遠くにあったのです。これは、宇宙の膨張が時間とともに加速していることを示していました。
二つのチームが同じ結論に
この発見をしたのは、サウル・パールマッターが率いたチームと、ブライアン・P・シュミットとアダム・G・リースが中心となったチームです。二つのチームはそれぞれ別々に研究を進め、同じ結論にたどり着きました。
この功績により、3人は2011年のノーベル物理学賞を受賞しました。宇宙の膨張がブレーキではなくアクセルを踏まれていたという発見は、宇宙の見方を大きく変えました。
アインシュタインの「宇宙定数」
ダークエネルギーの代表的な候補とされているのが、アインシュタインが1917年に考えた「宇宙定数」です。空間そのものが一定のエネルギーを持っていて、それが宇宙を押し広げているという考え方です。
現在の宇宙の標準的な理論では、ダークエネルギーはこの宇宙定数のように、時間がたっても変わらないものとして扱われてきました。
ダークエネルギーは弱まっている?
2025年3月、アメリカのアリゾナ州にある望遠鏡に取り付けられた観測装置「DESI」の研究チームが、注目の結果を発表しました。3年分の観測で集めた、約1500万個の銀河やクエーサーの分布をもとにした分析です。研究チームによると、DESIは一度に5000個の銀河の光をとらえることができ、5年間で約5000万個の天体を調べる計画です。
その結果を、宇宙誕生のころの光や超新星など、ほかの観測と組み合わせると、ダークエネルギーの働きが時間とともに弱まっている可能性が示されました。ただし、その確かさは、物理学で発見と認められる基準にはまだ届いていません。DESIのデータだけを見た場合は、これまでの標準的な理論とも矛盾しないとされています。
新しい宇宙望遠鏡が打ち上げられた
2026年8月30日、NASAのナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡が、アメリカのケネディ宇宙センターから打ち上げられました。ダークエネルギーやダークマター、太陽系の外の惑星を調べるための宇宙望遠鏡です。
ローマン宇宙望遠鏡は、ハッブル宇宙望遠鏡の1000倍ほどの速さで宇宙を広く調べられるように設計されています。地球から約160万キロメートル離れた場所へ3か月ほどかけて向かっていて、最初の画像は2027年の初めごろに公開される見込みです。
語られている主な説
空間そのもののエネルギーだという説
最も有力とされているのは、何もない空間そのものが持つエネルギーが、ダークエネルギーの正体だという考えです。アインシュタインの宇宙定数と同じように、時間がたっても変わらない力として働くとされています。
時間とともに変わるエネルギーだという説
ダークエネルギーは一定ではなく、場所や時間によって変わる、未知のエネルギーの場だという考えもあります。この考えは「クインテッセンス」と呼ばれ、ダークエネルギーが弱まっているかもしれないというDESIの結果とも関係して注目されています。
重力の理論のほうが違うという説
宇宙がとても大きな範囲では、アインシュタインの一般相対性理論が少し違っているのではないか、という考えもあります。この場合、ダークエネルギーという特別なものを考えなくても、加速膨張を説明できる可能性があります。
今も残る謎
ダークエネルギーが宇宙の膨張を加速させていることは、さまざまな観測で確かめられてきました。しかし、それが何なのか、本当に一定なのか、それとも変わっていくものなのかは、分かっていません。
ヨーロッパ宇宙機関の宇宙望遠鏡ユークリッドや、チリのヴェラ・C・ルービン天文台、そして打ち上げられたばかりのローマン宇宙望遠鏡が、これから宇宙の地図を詳しく描いていきます。ダークエネルギーの正体に近づく発見が、ここ数年のうちに出てくるかもしれません。
まとめ
ダークエネルギーは、宇宙の膨張を加速させている正体不明のエネルギーで、宇宙の中身のおよそ7割を占めると考えられています。1998年、遠くの超新星の観測から加速膨張が発見され、この発見は2011年のノーベル物理学賞につながりました。
最近では、ダークエネルギーが時間とともに弱まっている可能性も報告されています。2026年8月に打ち上げられたローマン宇宙望遠鏡などの観測で、その正体に迫る研究が続いています。
僕のひとりごと
僕がこのテーマで一番驚いたのは、宇宙の膨張がブレーキではなくアクセルを踏まれていたという発見です。しかも、その原因が宇宙の中身の7割も占めているのに、正体がまったく分からないというのですから、宇宙はまだまだ分からないことだらけです。
ダークエネルギーが弱まっているかもしれないという話も、宇宙の未来の姿が変わるかもしれないと思うと、ワクワクします。打ち上げられたばかりのローマン宇宙望遠鏡が、どんな答えを見せてくれるのか楽しみです。
参考情報
- NASA「Dark Energy」
- 日本天文学会 天文学辞典「ダークエネルギー」
- アストロアーツ「宇宙の加速膨張の発見で米研究者ら3人がノーベル物理学賞を受賞」(2011年10月5日)
- 高エネルギー加速器研究機構(KEK)「『加速膨張する宇宙』2011年ノーベル物理学賞の意義・前編」
- ローレンス・バークレー国立研究所「New DESI Results Strengthen Hints That Dark Energy May Evolve」(2025年3月19日)
- EarthSky「A new data release hints dark energy may be weakening」
- NASA「NASA’s Dark Universe-Seeking Nancy Grace Roman Space Telescope Launches」(2026年8月)
- ScienceDaily「NASA is about to launch a powerful new eye on the universe」(2026年8月)
アイキャッチ画像:NASA/WMAP Science Team(パブリックドメイン、Wikimedia Commons経由) ビッグバンから現在までの宇宙の膨張の歴史を描いた図です


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