UFOは、科学の研究対象になるのだろうか。1960年代の終わり、アメリカでこの問いに一つの答えを出そうとした調査がありました。
それが、コロラド大学の研究チームによる「コンドン委員会」の調査です。その報告は、アメリカ空軍のUFO調査が幕を閉じるきっかけになりました。この記事では、報告の中身と、今も語られる議論を整理します。
概要
コンドン委員会は、アメリカ空軍がお金を出し、コロラド大学に依頼して行われたUFOの科学的な調査の通称です。研究を率いたのは、コロラド大学の物理学者エドワード・コンドンでした。
調査の結果は「未確認飛行物体の科学的研究」という報告書にまとめられ、1969年に公表されました。報告は、UFOの研究を広く続けても、科学の進歩は見込めないと結論づけています。
確かな事実として分かっていること
空軍から独立した調査として始まった
報告書によると、コロラド大学のチームは1966年11月に最初の研究契約を結びました。調査は、空軍からは完全に独立して行われたとされています。
当時、空軍は1952年からプロジェクト・ブルーブックという計画でUFOの目撃報告を調べていました。報告書は、ブルーブックに記録された目撃が1万件を超えていたことにも触れています。
現地調査から写真の分析まで
チームは、物理の専門家と心理の専門家の二人一組で、目撃があった現場に出向いて話を聞きました。UFOの団体に参加するボランティアの協力を得て、新しい目撃をいち早く知らせてもらう仕組みも作っています。
調べた対象は、現地での聞き取りのほか、UFOを写したとされる写真や、レーダーに映った反応、UFOのかけらだとされる物体など、さまざまでした。国防総省の全領域異常対策室(AARO)の報告によると、報告書では59の事例が詳しく取り上げられたといいます。
約9割は身近なもので説明できた
報告書は、調べた報告のおよそ9割は、ありふれた物体を見間違えたものと考えるのが自然だとしています。そして、今の科学や技術では説明できないと確かめられた事例は、一つもなかったと結論づけました。
地球外の文明から宇宙船が来ているという考えについても、それを裏付ける説得力のある直接の証拠はないとしています。
過去21年の研究への厳しい評価
報告書の結論は、とても厳しいものでした。過去21年間のUFOの研究は、科学の知識に何も加えてこなかったとしたうえで、これ以上広く研究を続けても、科学が進歩するとは考えにくいとしたのです。
その一方で、はっきりした研究計画を持つ科学者が現れた場合には、その研究を支援すべきだとも書いています。UFOの研究を一律に否定したわけではない点は、見落とされがちです。
学校教育や国の安全についての提言
報告書は、学校で子どもがUFOについて調べたことを、授業の成果として認めるべきではないとも提言しました。その関心を、天文学や気象学のまじめな学習に向けるべきだという考えです。
国の安全については、UFOの報告が防衛上の脅威になったことはないという空軍の見方に、反する証拠はないとしました。そのうえで、ブルーブックのような特別な部署がなくても、ふだんの情報収集や監視の仕組みで対応できるとしています。
全米科学アカデミーの評価と空軍の決定
AAROの報告によると、報告書は1968年の終わりに全米科学アカデミーの委員会によって検討され、科学の方法をUFOの問題に当てはめようとした、十分に信頼できる取り組みだと評価されました。
アメリカ国立公文書館によると、空軍はこの報告書と全米科学アカデミーの検討をもとに、プロジェクト・ブルーブックを終えることを決めました。ブルーブックは1969年12月17日に終わっています。
語られている主な説
結論ありきの調査だったという批判
報告書には、発表当時から批判もありました。調査の途中で、計画の担当者が書いた内部のメモが外に漏れ、研究が最初から否定的な結論を前提にしていたのではないかと問題になったと伝えられています。
空軍のUFO調査に長く関わった天文学者のJ・アレン・ハイネックも、1972年の著書の中で、この報告書を批判したとされています。UFO研究家の間では、報告書は空軍が調査をやめるための口実だったという見方も語られてきました。
科学的に妥当な調査だったという評価
一方で、全米科学アカデミーの委員会は、報告書を信頼できる取り組みだと評価しました。空軍も、報告書の結論を受け入れて調査を終えています。
報告書そのものも、UFOの研究を頭ごなしに否定したのではなく、はっきりした計画のある研究は支援すべきだとしていました。どちらの立場から読むかによって、この報告書の印象は大きく変わります。
今も残る謎
報告書は、調べた報告のほとんどを身近なもので説明しましたが、すべての事例に答えが出たわけではありません。残った事例をどう受け止めるべきなのかは、今も意見が分かれています。
ブルーブックが終わったあと、アメリカ政府による公式のUFO調査はいったん区切りを迎えました。しかし2022年には、国防総省がUFOの報告を調べる全領域異常対策室を作っています。半世紀前の報告書が出した答えは、今も問い直され続けているのです。
まとめ
コンドン委員会の報告は、空軍の依頼でコロラド大学が行ったUFOの科学的な調査の結果で、1969年に公表されました。報告は、UFOの研究を広く続けても科学の進歩は見込めないと結論づけ、プロジェクト・ブルーブックが終わるきっかけになりました。
一方で、調査の進め方には批判もあり、その評価は今も分かれています。UFOと科学の関係を考えるうえで、欠かせない報告書の一つといえます。
僕のひとりごと
僕がこの報告書で意外だったのは、UFOの研究を全部否定したわけではなく、しっかりした計画のある研究は応援すべきだと書いていたことです。研究を続けても科学は進まない、という結論のほうだけが広く知られているのは、少しもったいない気がします。
学校の宿題の話まで出てくるのも、当時のUFOブームの大きさが感じられて面白いところです。同じ報告書でも、読む人の立場によってまったく違う顔を見せるのが、この問題の難しさだと思います。
参考情報
- 「Scientific Study of Unidentified Flying Objects」Section I: Recommendations and Conclusions(コンドン委員会報告、National Capital Area Skeptics が公開する本文)
- 「Scientific Study of Unidentified Flying Objects」Section II: Summary of the Study(同上)
- National Capital Area Skeptics「Condon Report Introduction」
- AARO「Report on the Historical Record of U.S. Government Involvement with Unidentified Anomalous Phenomena, Volume 1」(2024年、Wikisourceに掲載された本文)
- アメリカ国立公文書館「Unidentified Flying Objects – Project BLUE BOOK」
- オハイオ州立大学 Origins「The Air Force Investigation into UFOs」(2024年12月)
- Encyclopedia.com「Condon Report」(Encyclopedia of Occultism and Parapsychology)
アイキャッチ画像:National Institute of Standards and Technology(パブリックドメイン、Wikimedia Commons経由) 物理学者エドワード・コンドンの1945年から1951年ごろの写真で、UFOの調査をしていたころのものではありません


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