米国防総省が公開した3本のUFO映像と秘密計画AATIPとは

米国防総省が公開した3本のUFO映像と秘密計画AATIPとは UFO・UAP
U.S. Navy(パブリックドメイン、Wikimedia Commons経由) 2020年に米国防総省が正式に公開した、2015年1月撮影の映像「GIMBAL」の一場面です

2020年4月、アメリカ国防総省は、海軍の戦闘機が撮影した3本の映像を正式に公開しました。白黒の画面に正体の分からない物体が映り、パイロットたちの驚く声も入った、いわゆる「UFO映像」です。

これらの映像が広く知られるきっかけになったのは、国防総省がひそかにUFOを調べる計画を持っていたという2017年の報道でした。この記事では、映像とその計画「AATIP」について、確かな事実と説を分けて整理します。

概要

3本の映像は、ファイル名から「FLIR」「GIMBAL」「GOFAST」と呼ばれています。FLIRは2004年11月に、GIMBALとGOFASTは2015年1月に、海軍のF/A-18戦闘機の赤外線カメラで撮影されました。

AATIPは、日本語では「先端航空宇宙脅威特定計画」と訳される国防総省の計画です。報道によると、2007年に始まり、約2200万ドルの予算を使って、2012年に打ち切られました。

確かな事実として分かっていること

報道で明らかになった秘密の計画

2017年12月、ニューヨーク・タイムズなどが、国防総省の中にUFOを調べる計画があったと報じました。計画を後押ししたのは、ネバダ州選出で、当時の上院の多数党院内総務だったハリー・リード氏です。

報道によると、予算の多くは、リード氏の友人の実業家ロバート・ビゲロウ氏が経営する航空宇宙企業に流れました。国防総省は、ほかに優先すべき問題があるとして、計画を2012年に打ち切ったと説明しました。

AAROが説明する計画の実像

国防総省の全領域異常対策室(AARO)が2024年にまとめた報告によると、国防予算で認められた2200万ドルをもとに、国防情報局(DIA)が2009年に「AAWSAP」という計画を始めました。この計画はAATIPとも呼ばれてきましたが、AATIPという名前の正式な計画はなかったとされています。

計画の本来の目的は、将来の航空宇宙技術を調べることでした。報告によると、契約した民間企業は推進の仕組みや新しい材料など12の分野について報告書を作ったほか、空軍のUFO調査「プロジェクト・ブルーブック」の古い事例の見直しや目撃者への聞き取り、ユタ州の土地で起きたとされる超常現象の調査まで行っていたといいます。AAROは、これらのほかに、UFOの事例について中身のある調査をした形跡は見つかっていないとしています。

2019年1月には、国防情報局がこの計画で作られた38本の研究報告の題名の一覧を公開しました。ワープ航法やワームホール、物を見えなくする技術といった、SFのようなテーマも含まれていました。

2015年、東海岸の沖で

ニューヨーク・タイムズは2019年、空母セオドア・ルーズベルトのパイロットたちが、2014年の夏から2015年3月にかけて、バージニア州からフロリダ州にかけての沖で、正体の分からない物体をほぼ毎日のように見ていたと報じました。GOFASTは、この空母の搭乗員が撮影した映像です。

パイロットの一人だったライアン・グレーブズ氏は、2021年にアメリカのテレビ番組で、戦闘機のレーダーが新しくなった2014年から物体をとらえるようになり、少なくとも2年ほどは毎日のように見ていたという趣旨を語っています。GIMBALは、グレーブズ氏がいた飛行隊が撮影した映像です。ニューヨーク・タイムズは、こうした目撃がAATIPにも報告されていたと伝えています。

3本の映像に映っているもの

2004年のFLIRは、カリフォルニア州の沖で空母ニミッツの戦闘機が撮影したものです。楕円形の物体が映り、最後に左の方へ急に動いて画面から消えます。

詳しくはこちら:ニミッツ事件とは?米海軍パイロットが追った白い「チックタック」UFO

GIMBALは、フロリダ州の沖で撮影されました。ぼんやりと光る物体が浮かび、画面の中で回転していきます。音声には、物体が風速120ノット(時速約220キロ)の風に逆らって進んでいることなどに驚くパイロットたちの声が入っています。

GOFASTには、海面すれすれを猛スピードで飛んでいるように見える小さな物体が映っています。音声には、パイロットたちの驚く声が入っています。

流出から正式な公開へ

3本の映像は、2017年12月から2018年3月にかけて、元ミュージシャンのトム・デロング氏が共同で設立した民間企業などが公表し、広く知られるようになりました。海軍は2019年9月、映像は本物で、訓練空域に入り込んだ「未確認空中現象(UAP)」を映したものだと認めましたが、公表は許可していなかったとしました。

そして2020年4月27日、国防総省は3本の映像を正式に公開しました。出回っている映像が本物かどうかという誤解を解くためで、公開しても秘密の技術がもれることはないと判断したと説明しています。

語られている主な説

GOFASTは風に流される物体だという分析

NASAが設けた独立研究チームは、2023年の報告書でGOFASTを取り上げました。画面に表示されたカメラの角度や距離などの数字から計算すると、物体は海面近くではなく、高さ約4000メートル(1万3000フィート)にあったとされます。22秒間に動いた距離は約390メートルで、平均の速さは時速約64キロ(40マイル)だったといいます。

報告書によると、これはその高さでよく吹いている風の速さです。物体が海より冷たく映っていて、エンジンのような熱を出している様子もないことから、風に流されていた可能性が高いとしました。ただし、はっきりした結論には、さらにデータが必要だとしています。

AAROも2024年の議会の公聴会で、物体は高さ約4000メートルにあったと説明しました。速く見えたのは、動いている戦闘機から見たために起きる「視差」という目の錯覚だとしています。

GIMBALは遠くの飛行機だという見方

懐疑的な立場の分析家は、GIMBALに映っているのは遠くを飛ぶ普通のジェット機のエンジンの熱で、カメラの画像処理によってぼやけた光のかたまりに見えているのではないかと指摘しています。

回転して見えるのも、物体が回っているのではなく、戦闘機のカメラが物体を追い続けようとして向きを変える仕組みによるものだという説明です。ただし、これは映像についての説明にとどまります。

正体不明の物体は実在するという主張

グレーブズ氏は2023年の議会の公聴会で、UAPが外国の無人機なら差し迫った安全保障の問題、そうでなければ科学の問題であり、どちらにしても飛行の安全にかかわるという趣旨を述べました。

AATIPを率いていたと名乗るルイス・エリゾンド氏は、UFOは実在すると主張しています。ただ、NASAの研究チームの報告書は、これまでの科学論文には、UAPが地球の外から来たことを示す決定的な証拠はないとしています。

今も残る謎

AATIPをめぐっては、今も食い違う話が残っています。エリゾンド氏は、2017年10月に辞めるまで計画を率いていたと語っています。これに対し国防総省の報道官は2019年、同氏はAATIPで担当する仕事を持っていなかったという趣旨を説明しました。

映像のうちGIMBALについては、国防総省やAAROが物体の正体を結論づけた公式の発表は、今回調べた範囲では確認できませんでした。

まとめ

国防総省が2020年に公開した3本の映像は、2004年と2015年に海軍の戦闘機が撮影したものです。映像が知られるきっかけとなったAATIPは、約2200万ドルを使った計画だと報じられましたが、AAROは、古い事例の見直しや聞き取りのほかに、UFOの事例について中身のある調査をした形跡は見つかっていないとしています。

GOFASTについては、風に流される物体だった可能性が高いという分析が出ています。一方で、GIMBALに映った物体や、パイロットたちが見たという数多くの物体の正体は、まだ分かっていません。

僕のひとりごと

僕がこのテーマで一番おもしろいと思ったのは、同じ映像でも、画面の数字をていねいに計算すると見え方ががらりと変わるところです。海の上を猛スピードで飛んでいるように見えたGOFASTが、風に流される物体だったかもしれないと知って、映像の印象だけで判断する怖さを感じました。

それでも、パイロットたちが毎日のように何かを見ていたという話は、やっぱり気になります。「秘密の計画」という言葉のワクワク感に流されず、分かったことと分からないことを分けて見ていきたいと思いました。

参考情報

アイキャッチ画像:U.S. Navy(パブリックドメイン、Wikimedia Commons経由) 2020年に米国防総省が正式に公開した、2015年1月撮影の映像「GIMBAL」の一場面です

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