太陽系の惑星は、水星から海王星までの8つです。ところが海王星のはるか外側に、まだ誰も見たことのない9番目の惑星が隠れているかもしれない、という説があります。
それが「プラネット・ナイン(第9惑星)」仮説です。この記事では、この仮説の根拠と反論、そして答えを出すかもしれない最新の観測について、確かな事実と語られている説を分けて整理します。
概要
プラネット・ナインは、2016年1月にアメリカのカリフォルニア工科大学のコンスタンティン・バティギンとマイク・ブラウンが、存在を示す証拠を発表した未発見の惑星です。海王星よりずっと遠くの天体の軌道が、そろいすぎていることが出発点でした。
NASAによると、その重さは地球の5倍から10倍ほど、太陽からの距離は海王星の20倍から30倍ほどと考えられ、太陽の周りを1周するのに1万年から2万年かかるとされています。ただし、まだ見つかっておらず、本当にあるのかどうかは研究者の間でも議論が続いています。
確かな事実として分かっていること
「第9惑星」だった冥王星
かつて「太陽系第9惑星」と呼ばれていたのは、1930年にアメリカの天文学者トンボーが見つけた冥王星でした。しかし2006年、チェコのプラハで開かれた国際天文学連合の総会で、冥王星は惑星から外れ、新しく作られた「準惑星」という分類に入りました。
冥王星の軌道の近くには、似たような天体がたくさん回っていることが分かってきたためです。カリフォルニア工科大学によると、プラネット・ナインを提唱したブラウンは、この冥王星の分類の見直しに大きな役割を果たした天文学者でもあります。
そろいすぎていた6つの天体の軌道
海王星の外側には、「太陽系外縁天体」と呼ばれる氷の小天体がたくさん回っています。バティギンとブラウンは、その中でも特に遠くを回る6つの天体の軌道が、同じ方向を向いた細長い楕円になっていて、軌道の傾きもそろっていることに注目しました。
研究チームによると、このようなそろい方が偶然に起きる確率は、約0.007%しかありません。2人はコンピューターのシミュレーションで、海王星の20倍以上遠くを回る、地球の10倍ほどの重さの惑星があれば、このそろい方を説明できると発表しました。
予想された範囲の多くで見つからない
その後、世界の望遠鏡のデータを使った探索が続けられています。2024年に発表された研究では、パンスターズと呼ばれる観測計画のデータを調べても、プラネット・ナインは見つかりませんでした。
この研究と、それまでのほかの探索を合わせると、2人が予想した範囲のうち78%で、プラネット・ナインがないことが確かめられたとされています。残りの多くは、とても暗くしか見えない場所や、天の川と重なって探しにくい場所です。
赤外線の観測から見つかった候補
2025年には、台湾の国立清華大学などのチームが、1983年に空全体を観測した赤外線天文衛星IRASと、日本の赤外線天文衛星「あかり」の観測データを比べた研究を発表しました。23年の間に動いた天体を探し、プラネット・ナインの候補を1つ見つけたとしています。
候補は、太陽から500から700天文単位(1天文単位は太陽と地球の距離)ほど離れた、地球の7倍から17倍ほどの重さの天体と見積もられています。ただし、2回の観測だけでは軌道を決められず、本当に惑星なのかを確かめるには、さらに観測が必要だとされています。
すばる望遠鏡が見つけた「アンモナイト」
2025年7月には、ハワイにある日本のすばる望遠鏡で、太陽系のはるか外側を回る新しい天体「2023 KQ14」が見つかったと、国立天文台などが発表しました。産業医科大学の吉田二美らのチームが見つけた天体で、「アンモナイト」という愛称が付けられています。
この天体は、太陽に最も近づくときでも約71天文単位と、海王星の2倍以上も遠くにあります。こうした天体は「セドノイド」と呼ばれ、見つかったのはこれが4つ目です。ところがアンモナイトの今の軌道は、ほかの3つのセドノイドとそろっていませんでした。国立天文台は、この結果がプラネット・ナイン仮説の可能性を低くしていると伝えています。
ルービン天文台の本格観測が始まった
2026年6月30日には、チリにあるヴェラ・C・ルービン天文台が、10年間にわたる本格的な観測「LSST」を始めました。南の空全体を数日ごとにくり返し撮影する計画です。
本格観測の前の調整期間だけでも、海王星より外側を回る天体が380個も新たに見つかっています。暗くて遠い天体をたくさん見つけられるこの観測は、プラネット・ナインを探すうえでも期待されています。
語られている主な説
地球の数倍の重さの惑星が隠れているという説
バティギンとブラウンは、プラネット・ナインが遠い天体の軌道を重力で動かしていると考えています。2人はその後も研究を続け、軌道が太陽系の面から大きく傾いた天体など、ほかの特徴もプラネット・ナインで説明できると主張しています。
観測のかたよりにすぎないという説
一方、2021年にはアメリカのミシガン大学の研究者らが、3つの観測計画で見つかった14個の遠い天体を調べ直しました。そして、軌道がそろって見えるのは、空のどこをいつ観測したかというかたよりで説明できると発表しています。
この研究は、プラネット・ナインがないと証明したわけではありません。ただ、存在を示す証拠にはならないという立場です。これに対してバティギンは、この分析では本当のそろい方とばらばらな分布を見分けられないと反論したと伝えられています。
もっと小さな地球のような惑星があるという説
2023年には、近畿大学と国立天文台の研究チームが、別の考えを発表しました。太陽から200から500天文単位ほどのところに、地球の1.5倍から3倍ほどの重さの惑星があれば、海王星の外側の天体のさまざまな特徴を説明できるというものです。
この「カイパーベルト惑星」は、プラネット・ナインより小さく、太陽により近いところを回ると考えられています。
今も残る謎
一番の謎は、もちろんプラネット・ナインが本当にあるのかどうかです。遠い天体の軌道のそろい方が本物なのか、それとも観測のかたよりなのかは、まだ決着していません。
本当にあるとしても、太陽から遠く暗いため、見つけるのは簡単ではありません。見つかる天体が増えれば、軌道のそろい方を確かめる手がかりも増えます。ルービン天文台の観測が進むこれからの数年で、答えに大きく近づくかもしれません。
まとめ
プラネット・ナインは、海王星のはるか外側にあると考えられている未発見の惑星です。2016年、遠い天体の軌道がそろいすぎていることから、その存在が提唱されました。
しかし、予想された範囲の多くでは見つかっておらず、観測のかたよりだという反論や、すばる望遠鏡の新発見による疑問も出ています。2026年に始まったルービン天文台の観測が、この論争に答えを出すと期待されています。
僕のひとりごと
僕がこのテーマで一番おもしろいと思ったのは、冥王星を惑星から外すことに大きな役割を果たした天文学者が、今度は新しい第9惑星を探しているところです。まるで空いた席に、本物の9番目を座らせようとしているようですよね。
まだ見えない惑星の存在を、小さな天体の軌道のそろい方から推理していくのは、まるで探偵のようでワクワクします。ルービン天文台が、この探偵の推理が当たっていたのかどうか、はっきりさせてくれる日が楽しみです。
参考情報
- NASA「Hypothetical Planet X」
- カリフォルニア工科大学「Caltech Researchers Find Evidence of a Real Ninth Planet」(2016年1月20日)
- アストロアーツ「シミュレーションで推測、太陽系第9惑星存在の可能性」(2016年1月21日)
- 子供の科学(誠文堂新光社)「Q12 1930年、太陽系の第9惑星が発見されたとして大ニュースに。しかし、2006年に惑星から外れて『準惑星』となった天体は?」
- Brown, Holman, Batygin「A Pan-STARRS1 Search for Planet Nine」(arXiv、The Astronomical Journal 2024年)
- Astronomy「Evidence builds for Planet Nine lurking somewhere out there」(2024年5月)
- Phan ほか「A Search for Planet Nine with IRAS and AKARI Data」(arXiv、2025年)
- sorae「2つの赤外線宇宙望遠鏡のデータから、太陽系の外側に新たな惑星候補天体の存在が示唆」(2025年5月6日)
- 国立天文台「すばる望遠鏡が見つけた太陽系の『化石』」(2025年7月15日)
- すばる望遠鏡「すばる望遠鏡が見つけた太陽系の『化石』」(2025年7月)
- ScienceDaily「Planet nine mystery deepens as new discovery challenges hidden planet theory」(2026年6月8日)
- ルービン天文台「Action! NSF–DOE Vera C. Rubin Observatory Begins Capturing the Greatest Cosmic Movie Ever Made」(2026年6月)
- SLAC国立加速器研究所「Action! NSF–DOE Vera C. Rubin Observatory begins capturing the greatest cosmic movie ever made」(2026年6月30日)
- Napier ほか「No Evidence for Orbital Clustering in the Extreme Trans-Neptunian Objects」(arXiv、2021年)
- IFLScience「Evidence For Planet Nine May Rely On Selection Bias」(2021年2月17日)
- 近畿大学「シミュレーションで太陽系外縁部に未発見の惑星がある可能性を示唆」(2023年8月25日)
- sorae「太陽系外縁部にあるかもしれない未知の惑星をシミュレーションで検証 質量は地球の1.5~3倍か」(2023年10月9日)
アイキャッチ画像:NASA/JPL-Caltech 太陽系の果てを回る天体セドナを描いた想像図です(2004年公開)。とても遠いため、太陽が明るい星のように見えています
この記事は公開時点の情報をもとにまとめています。研究や調査は日々進んでいるため、新しい発見で内容が変わることがあります。誤りに気づいた方は、コメントで教えていただけるとうれしいです。


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