高速電波バーストとは?1000分の1秒で消える宇宙の謎の電波

高速電波バーストとは?1000分の1秒で消える宇宙の謎の電波 未解決ミステリー
NASA's Goddard Space Flight Center/Chris Smith (USRA) 強い磁場を持つ中性子星「マグネター」からX線が噴き出す様子を描いた想像図です

宇宙のどこかから、ほんの一瞬だけ、とても強い電波が届くことがあります。その長さは、わずか1000分の1秒ほどしかありません。

この現象は「高速電波バースト(FRB)」と呼ばれています。2007年に初めて見つかって以来、何千回も観測されてきましたが、何がこの電波を出しているのかは、まだ完全には分かっていません。この記事では、確かな事実と語られている説を分けて整理します。

概要

高速電波バーストは、空のある方向から、数ミリ秒以下というごく短い電波のパルスが届く現象です。その多くは、天の川銀河の外の、遠く離れた銀河から届いていると考えられています。

一度だけ光って二度と現れないものもあれば、同じ場所から何度もくり返し届くものもあります。2020年には、天の川銀河の中にある「マグネター」と呼ばれる天体から高速電波バーストが届き、正体に迫る大きな手がかりになりました。

確かな事実として分かっていること

昔のデータの中から見つかった

最初の高速電波バーストは、2007年に、天文学者のローリマーらによって報告されました。電波望遠鏡が以前に記録していた観測データを調べ直していたところ、正体の分からない強い電波のパルスが見つかったのです。

このバーストは、記録された日付から「FRB 010724」と呼ばれています。その後、2013年に同じような現象がいくつも見つかり、よくある現象らしいことが分かって、「高速電波バースト」という名前が付けられました。

届くまでの遅れで距離が分かる

電波は、宇宙空間にあるガスの中を通ってくる間に、低い周波数ほど少しずつ遅れて届きます。この遅れの大きさを調べると、電波がどれくらいの距離を旅してきたのかを見積もることができます。

この方法などから、高速電波バーストの多くは、天の川銀河よりはるか遠くの銀河から届いていることが分かってきました。遠い宇宙から届く電波は、途中にあるガスの量を調べる手がかりにもなると期待されています。

くり返す高速電波バースト

2012年にプエルトリコのアレシボ天文台で見つかった「FRB 121102」は、同じ場所からくり返し電波が届くことが分かった、初めての高速電波バーストです。くり返すおかげで、ほかの望遠鏡でも狙って観測することができました。

2017年には、この電波が、地球から30億光年以上離れた小さな銀河から届いていることが突き止められました。その銀河は、天の川銀河の重さの1%にも満たない、星が盛んに生まれている小さな銀河でした。

何千回も見つかるようになった

カナダの電波望遠鏡CHIMEは、2018年から本格的に高速電波バーストを探し始めました。2021年には、最初の1年ほどで見つけた535個のバーストをまとめて発表し、それまでに知られていた数を大きく上回りました。

その後もCHIMEは、何千回もの高速電波バーストをとらえています。くり返すものと一度きりのものでは性質が違うことも分かり、高速電波バーストにはいくつかの種類の原因がある可能性が考えられています。

天の川銀河の中で起きた高速電波バースト

2020年4月28日、CHIMEと、アメリカの観測装置STARE2が、天の川銀河の中にあるマグネター「SGR 1935+2154」から届いた強い電波のバーストをとらえました。天の川銀河の中で高速電波バーストのような電波が見つかったのは、これが初めてです。

マグネターは、重い星が一生を終えたあとに残る中性子星の一種で、ふつうの中性子星の1000倍ほども強い磁場を持っています。このとき、同じマグネターから同時にX線のバーストも観測されていて、マグネターが高速電波バーストを出せることを示す大きな証拠になりました。

史上最も明るい高速電波バースト

2025年3月16日には、CHIMEがこれまでで最も明るい高速電波バーストをとらえました。「FRB 20250316A」と名付けられ、「史上最も明るい電波の閃光」という意味の愛称でも呼ばれています。

このバーストは、おおぐま座の方向にある約1億3000万光年先の銀河NGC 4141から届いていました。CHIMEに新しく加わった観測装置のおかげで、発生した場所を直径45光年ほどの範囲にまで絞り込むことができ、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でもその場所が観測されました。

語られている主な説

マグネターが出しているという説

現在、最も有力とされているのは、マグネターが高速電波バーストを出しているという説です。2020年に天の川銀河の中のマグネターから同じような電波が届いたことで、この説は大きく前進しました。

くり返すFRB 121102が、星が盛んに生まれている小さな銀河から届いていたことも、生まれて間もない中性子星が関わっているという考えと合っています。

古い星の集まりから生まれるという説

一方で、近くの銀河M81の周りにある、古い星ばかりが集まった球状星団から、くり返す高速電波バーストが届いていることも分かりました。これは、それまでに知られていた、天の川銀河の外の高速電波バーストの中で、最も近いものの40分の1ほどの距離です。

ふつう、マグネターは重い星が爆発して生まれる若い天体だと考えられています。古い星の集まりから届いたことで、白色矮星がつぶれたり、星どうしが合体したりしてできた中性子星など、別の生まれ方も考えられるようになりました。

今も残る謎

天の川銀河の中のマグネターから届いた電波は、ほかの銀河から届く高速電波バーストに比べると弱いものだったとされています。そのため、遠くの銀河から届くすべての高速電波バーストを、マグネターだけで説明できるのかは分かっていません。

くり返すものと一度きりのものが同じ仕組みなのかどうかも、まだはっきりしていません。2025年の最も明るいバーストは、6年以上にわたって600時間を超える観測をしても、同じ場所から二度目の電波は見つかっていないと報告されています。

日本でも、2022年に長野県にあるJAXAの臼田宇宙空間観測所の64メートル電波望遠鏡が、国内で初めて高速電波バーストの検出に成功したと報じられています。世界中の望遠鏡が、この一瞬の電波の正体を追い続けています。

まとめ

高速電波バーストは、数ミリ秒以下というごく短い時間だけ、宇宙のかなたから強い電波が届く現象です。2007年に初めて報告されて以来、観測できる数が大きく増え、くり返すものや、天の川銀河の中で起きたものも見つかっています。

マグネターが正体の一つであることはほぼ確かになってきましたが、すべてを説明できるのかは分かっていません。一瞬で消える宇宙の電波の正体探しは、今も続いています。

僕のひとりごと

僕がこの現象で面白いと思うのは、最初の高速電波バーストが、昔のデータを調べ直す中で見つかったということです。見過ごされていた一瞬の信号から、大きな宇宙の謎が始まったと思うと、データを丁寧に見ることの大切さを感じます。

しかも、天の川銀河の中でも起きていたというのは驚きでした。次に大きな発見があるときには、日本の望遠鏡も活躍してくれたらうれしいです。

アイキャッチ画像:NASA's Goddard Space Flight Center/Chris Smith (USRA) 強い磁場を持つ中性子星「マグネター」からX線が噴き出す様子を描いた想像図です

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