人類最遠の記録を更新 アルテミス2号、半世紀以上ぶりの有人月飛行

人類最遠の記録を更新 アルテミス2号、半世紀以上ぶりの有人月飛行 宇宙ニュース
NASA アルテミス2号の乗組員が2026年4月6日(アメリカ東部時間)、月のそばを通過しているときにオリオン宇宙船の窓から撮影した「地球の入り」です。手前は月面のクレーターです

2026年4月、4人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船が月の裏側を回り込み、無事に地球へ帰ってきました。NASAの「アルテミス2号(アルテミスII)」です。人が月の近くまで行ったのは、1972年のアポロ17号以来、半世紀以上ぶりのことでした。

この飛行で、乗組員は人類が地球から最も遠くまで行った記録も塗り替えました。この記事では、アルテミス2号の飛行で何が起きたのか、そして月を目指す計画がこれからどこへ向かうのかを紹介します。

概要

アルテミス計画は、アメリカが中心となって再び人を月へ送り、月で長く活動できるようにすることを目指す計画です。その先には、人を火星へ送ることも見すえています。

2022年11月には、人が乗らない試験飛行「アルテミス1号」が行われ、宇宙船オリオンが月を回って地球に戻りました。アルテミス2号は、そのオリオンに初めて人を乗せた試験飛行です。月には着陸せず、生命維持装置などが人を乗せた状態できちんと働くかを確かめることが大きな目的でした。

乗組員は、船長のリード・ワイズマン、パイロットのビクター・グローバー、ミッションスペシャリストのクリスティーナ・コックの3人のNASAの宇宙飛行士と、カナダ宇宙庁のジェレミー・ハンセン宇宙飛行士です。女性、黒人、アメリカ人以外の宇宙飛行士が地球の近くの軌道を離れて月へ向かうのは、これが初めてでした。

確かな事実として分かっていること

延期を重ねた打ち上げ

アルテミス2号の打ち上げは、当初は2024年の終わりごろに予定されていました。しかし、アルテミス1号で熱シールド(大気圏に突入するときの熱から宇宙船を守る部分)の表面が予想外に欠けたことや、生命維持装置にかかわる部品の問題などが見つかり、延期が重なりました。

NASAは調査の結果、熱シールドの材料の内側で発生したガスがうまく抜けず、ひび割れや欠けにつながったと結論づけました。そのうえで熱シールドは作り直さず、大気圏への突入の仕方を変えることで乗組員の安全を保てると判断しています。

2026年に入ってからも、2月初めの燃料を入れる試験で液体水素の漏れが見つかりました。さらにその後の作業で、ロケットの上段でヘリウムが正しく流れない問題が起きました。ロケットはいったん組立棟に戻されて修理され、打ち上げは4月にずれ込みました。

打ち上げから月へ

アルテミス2号は、アメリカ東部時間の2026年4月1日午後6時35分(日本時間2日午前7時35分)、フロリダ州のNASAケネディ宇宙センターから、大型ロケットSLS(スペース・ローンチ・システム)で打ち上げられました。

オリオンはまず、地球の周りを細長い楕円を描いて回る軌道に入り、約1日かけて船内の装置を点検しました。このとき乗組員は、切り離したロケットの上段を目標にしてオリオンを手動で操縦し、将来のドッキングに向けて操縦のしやすさを確かめています。

その後、オリオンはエンジンを約6分間噴射して、月へ向かう道すじに入りました。月の裏側を回り込んだあと、地球の重力に引かれて自然に戻ってくる「自由帰還軌道」と呼ばれる飛び方で、月を回る軌道に入るより燃料が少なくてすみます。

乗組員は打ち上げ前の2025年9月、自分たちのオリオンを「インテグリティ」と名付けていました。誠実さや高潔さを意味する英語で、乗組員とミッションを支える大勢の人たちの信頼関係などを表しているといいます。

アポロ13号の記録を破る

4月6日(日本時間7日)、オリオンは地球から約40万170キロメートルの地点を越え、1970年にアポロ13号が作った有人宇宙飛行の最遠記録を破りました。最も遠いところでは地球から約40万6770キロメートルに達し、それまでの記録を約6600キロメートル上回りました。

アポロ13号は、酸素タンクの爆発事故で月着陸をあきらめ、地球に引き返す途中でこの記録を作りました。アルテミス2号の記録は、計画どおりの飛行の中で生まれたものです。

月の裏側と宇宙から見た日食

同じ日、オリオンは約7時間かけて月のそばを通過し、月面から最も近いところで約6500キロメートルの高さを飛びました。乗組員は、月の裏側の一部を人間として初めて自分の目で見て、クレーターや古い溶岩の流れの跡などを観察し、写真に収めました。

月の向こうに地球が沈む「地球の入り」や、再び地球が現れる「地球の出」も見ています。さらに、月が太陽を隠す日食を宇宙から1時間近く観察し、太陽を取り巻くコロナを撮影しました。暗くなった月面では、小さな天体がぶつかって光る閃光が6回とらえられています。

乗組員は飛行中、月の2つのクレーターの名前も提案しました。1つは宇宙船にちなんだ「インテグリティ」、もう1つはワイズマン船長の亡くなった妻の名前にちなんだ「キャロル」です。なお、月の地形の名前を正式に決めるのは、国際天文学連合(IAU)です。

太平洋への着水

オリオンは、アメリカ東部時間の4月10日午後8時7分(日本時間11日午前9時7分)、カリフォルニア州サンディエゴ沖の太平洋に着水しました。打ち上げから着水までは約9日と1時間半で、飛んだ距離は約112万キロメートルでした。

NASAが4月20日に発表した最初の評価によると、着水した場所は目標から約4.7キロメートルしか離れていませんでした。熱シールドも予想どおりに働き、アルテミス1号で見られた表面の欠けは、量も大きさも大幅に減っていたとされています。

一方で、打ち上げ後まもなく、トイレの尿を船外に捨てる配管にトラブルが起き、乗組員が地上の管制チームと協力して対処しました。NASAは原因を調べ、次のミッションに向けて対策を進めるとしています。

これからの予定

NASAは2026年2月、アルテミス計画の進め方を大きく変えると発表しました。もともと月面着陸を目指していたアルテミス3号は、2027年に地球の周りを回る軌道で試験を行うミッションに変わりました。

アルテミス3号では、スペースXとブルーオリジンが開発している月着陸船の一方または両方とオリオンがドッキングする試験などを行う予定です。2026年6月には乗組員4人が発表され、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の宇宙飛行士も1人加わっています。

最初の月面着陸は、2028年のアルテミス4号で行う計画です。NASAは、その後は少なくとも毎年1回の月面着陸を目指すとしています。

日本もこの計画に深くかかわっています。2024年4月、日本とアメリカは、日本が宇宙服なしで乗って暮らせる月面車「有人与圧ローバー」を提供し、NASAが日本人宇宙飛行士に2回の月面着陸の機会を用意することで合意しました。

今も残る課題

アルテミス2号は大きな成果を上げましたが、課題も残っています。熱シールドは、アラバマ州にあるNASAのマーシャル宇宙飛行センターに運ばれ、試料の採取やX線を使った内部の調査が行われることになっています。詳しい分析はこれからも続きます。

また、人を月面に降ろす着陸船は、まだ開発の途中です。アルテミス3号で行う地球の周りでの試験は、着陸の前に、こうした新しい技術を確かめておくためのものです。

中国も、2030年までに自国の宇宙飛行士を月面に着陸させる目標を掲げています。NASAは計画を変えた理由の一つとして、手ごわい競争相手の力が日に日に増していることを挙げ、計画を早める必要があると説明しています。

まとめ

アルテミス2号は2026年4月、半世紀以上ぶりに人を月の近くまで運び、無事に地球へ連れ帰りました。人類が地球から最も遠くまで行った記録を塗り替え、月の裏側や宇宙から見る日食など、多くの観察も行いました。

熱シールドの詳しい分析やトイレのトラブルの原因調査など、次に生かすべき課題も見えています。2027年のアルテミス3号、そして2028年に予定されている月面着陸へと、アルテミス計画は次の段階に進もうとしています。

僕のひとりごと

僕がこのテーマで一番心に残ったのは、乗組員が月のクレーターに、船長の亡くなった奥さんの名前を付けようと提案した場面です。最新の技術を試す飛行の中に、こんなに人間らしいエピソードがあったことに胸が熱くなりました。

アポロ13号の記録が事故から生還する途中で生まれたのに対して、今回は計画どおりの飛行で塗り替えられたという点にも、半世紀の時の流れを感じます。日本人の宇宙飛行士が月に降り立つ日が来るのを、今から楽しみに待ちたいです。

参考情報

アイキャッチ画像:NASA アルテミス2号の乗組員が2026年4月6日(アメリカ東部時間)、月のそばを通過しているときにオリオン宇宙船の窓から撮影した「地球の入り」です。手前は月面のクレーターです

この記事は公開時点の情報をもとにまとめています。研究や調査は日々進んでいるため、新しい発見で内容が変わることがあります。誤りに気づいた方は、コメントで教えていただけるとうれしいです。

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