1980年のクリスマスの翌日、イギリス東部の森で、アメリカ空軍の兵士たちが木々の間を動く不思議な光を目撃しました。その2晩後には、基地の副司令官が自ら森に入り、目の前の出来事をテープに録音しています。
副司令官がイギリス国防省に送った報告書は、のちに公開されて大きな話題となり、この事件は「イギリスのロズウェル」と呼ばれるようになりました。この記事では、公文書に残る記録と、今も語られる説を整理します。
概要
レンデルシャムの森事件は、1980年12月下旬に、イングランド東部サフォーク州のレンデルシャムの森で起きたUFOの目撃事件です。森のそばには、イギリス空軍の基地としてアメリカ空軍に貸し出されていたウッドブリッジ基地がありました。
光が目撃されたのは、12月26日の未明と28日の未明の2回です。目撃したのは基地のアメリカ兵たちで、2回目には副司令官のチャールズ・ホルト中佐も加わっていました。イギリスで最もよく知られたUFO事件とされています。
確かな事実として分かっていること
墜落した飛行機だと思って森へ
最初の目撃は、12月26日の午前3時ごろでした。ウッドブリッジ基地の東側のゲートの近くで、警備の兵士たちが、森の中へ降りていくような光を見たのです。兵士たちは飛行機が墜落したのではないかと考え、3人が歩いて森へ調べに入りました。
ホルトが後にまとめた報告書によると、兵士たちは森の中で、金属のように見える光る物体を見たと報告しました。物体は三角形で、幅2から3メートル、高さ2メートルほど。上には脈打つように光る赤いライト、下には青いライトがあり、森全体を白い光で照らしていたといいます。
兵士たちが近づくと、物体は木々の間を縫うように動いて見えなくなりました。そのとき近くの農場の動物たちがひどく騒いだことも、報告書に書かれています。
地面に残った3つのくぼみ
夜が明けると、森の中の空き地で、地面に3つのくぼみが見つかりました。報告書によると、くぼみは深さ約4センチ(1.5インチ)、直径約18センチ(7インチ)で、三角形に並んでいたといいます。まわりの木にも跡が見つかったとされています。
基地からの連絡で、地元の警察官も現場に来ています。最初の夜の午前4時過ぎに来た警察官は、見えた光は海岸にあるオーフォードネス灯台の光だけだったと報告しました。朝に再び呼ばれたときも、くぼみは動物が作ったものかもしれないと考えたとされています。
副司令官が森で録音したテープ
2晩後の12月28日の未明、副司令官のホルトが、選んだ部下たちを連れて森に入りました。ホルトは小型のテープレコーダーを持っていき、その場で見たことを声で記録しています。
一行は放射線を測る機械で現場を調べ、その夜遅く、木々の向こうに太陽のような赤い光を見ました。報告書によると、光は動き回りながら脈打ち、やがて5つの白い物体に分かれて消えたといいます。
その後、空には星のような物体が3つ現れました。北に2つ、南に1つで、どれも地平線から10度ほどの高さでした。南の物体は2から3時間ほど見え続け、ときどき地上に向けて光の筋を出していたと報告されています。
2週間後に書かれた報告書
ホルトは1981年1月13日付けで、「説明のつかない光」という題の1枚の報告書をまとめ、イギリス国防省に送りました。ただ、この報告書は事件から2週間ほどたってから書かれたもので、2回の目撃の日付を、どちらも実際より1日遅く書いてしまっています。
なお、アメリカ空軍は、この事件の11年前の1969年に、UFOの調査計画「プロジェクト・ブルーブック」を終えていました。
詳しくはこちら:プロジェクト・ブルーブックとは?米空軍が17年続けたUFO調査
ホルトの報告書は、1983年にアメリカの情報公開法にもとづいて公開されました。同じ年の10月には、イギリスの大衆紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドが、UFOがサフォークに着陸したという記事を1面で報じ、事件は一気に有名になります。
イギリス国防省の判断
イギリス国立公文書館で公開されている国防省の記録によると、国防省はこの出来事を説明できませんでした。それでも、当時のレーダーに正体不明の物体が映っていなかったことから、国の防衛にとっては重要ではないと判断しています。
国防省は、ホルトが2週間近く報告しなかったことや、その扱いが控えめだったことも、事件の重要度を表していると見ていました。一方、イギリス軍の元トップ(元国防参謀総長)は、報告が正しければ領空が侵されたことになり、間違いなら多くの米兵が深刻な見間違いをしたことになる、どちらにしても心配だという趣旨の手紙を国防大臣に送っています。
国防省はこの事件のファイルを2001年に公開しました。ホルトが送った報告書の原本は、今は国立公文書館に保管されています。
語られている主な説
火球と灯台と星を見間違えたという説
懐疑的な立場から出されているのが、夜空のいくつかの光を見間違えたという説明です。イギリスの天文学の著述家は、最初の目撃があった26日の午前3時少し前に、非常に明るい流れ星(火球)がイギリス南部の上空で燃え尽きていたと指摘しました。森に何かが落ちたように見えたのは、この火球だったという考えです。
木々の間で点滅していた光については、地元の森林官が、兵士たちが見た方向の先にオーフォードネス灯台があると指摘しました。当時この灯台はイギリスでも特に明るい灯台の一つで、5秒ごとに光っていました。ホルトのテープには、光が見えるたびに声を上げる場面があり、その間隔が灯台と同じ5秒だとされています。
最初の夜に森に入った兵士の一人も、当時書いた供述書に、光を2マイル(約3キロ)ほど追いかけたところで灯台の光だと分かったという趣旨のことを書いています。
南の空に何時間も見えていた物体は、夜空で一番明るい恒星のシリウスだったという説明もあります。地面のくぼみはウサギが掘った跡、木の跡は森林作業員が伐採の目印につけた斧の傷だったと、地元の森林官は見ています。放射線の値も、自然界にもともとある放射線と変わらない程度だったと指摘されています。
地球の外から来た乗り物だという説
一方で、本当に未知の飛行物体が着陸したと考える人もいます。最初の夜に森に入った兵士の一人は、後になって、着陸した機体に手で触れたと語るようになりました。そのとき受け取ったという、0と1が並んだ2進数のコードをノートに書き留めたとも主張しています。ただし、こうした話は当時の記録には出てきません。
ホルト自身も、事件から30年後の2010年に宣誓供述書に署名し、自分が見たものは地球の外から来たと信じていること、そしてアメリカとイギリスの政府が真実を隠してきたことを主張しました。これに対して懐疑的な研究者は、供述書の内容が当時のテープや報告書と食い違っていると批判しています。
いたずらや軍の実験だという説
このほか、元警備兵の一人が、パトカーのライトを改造して光を作ったのは自分だと名乗り出たこともありますが、それが事件の夜だったことを示す証拠はありません。秘密の軍事実験を見間違えたという説も語られています。
今も残る謎
灯台説には反論もあります。ホルトは、灯台の光は別の方向に見えていて、自分たちが見た光とは区別できたと主張してきました。これに対して懐疑的な研究者は、ホルトたちがいた場所から見ると、灯台は光と同じ方向にあったと反論しています。
目撃者の話が年月とともに変わってきたことも、事件を分かりにくくしています。当時の供述書やテープと、後の証言のどちらを重く見るかで、事件の姿はまったく違って見えるのです。
事件の舞台から見えていたオーフォードネス灯台は、2013年に役目を終え、海岸の侵食が進んだため2020年に取り壊されました。現在のレンデルシャムの森には、事件にちなんだ約5キロの散策路「UFOトレイル」が整備されています。
まとめ
レンデルシャムの森事件は、1980年12月に、イギリスの空軍基地のそばの森で、アメリカ兵たちが正体不明の光を見たと報告した事件です。基地の副司令官が書いた報告書と録音テープという、UFO事件としては珍しい公式の記録が残っています。
火球と灯台と星の見間違いだとする説明は多くの点に答えていますが、今も未知の物体だったと主張する目撃者もいます。記録が多く残っているからこそ、見方が大きく分かれる事件だといえます。
僕のひとりごと
僕がこの事件で一番おもしろいと思うのは、副司令官という立場の人が、テープを回しながら森の中で光を追いかけていたところです。その録音が、のちに灯台説の手がかりになったというのは、なんとも皮肉な話ですよね。同じ報告書やテープを前にしても、未知の物体だと考える人と見間違いだと考える人がいて、記録があっても謎は簡単には終わらないのだと感じました。あの灯台がもう取り壊されていると知って、少しさびしい気持ちにもなりました。
参考情報
- The National Archives「Unidentified Flying Objects (UFOs)」(David Clarke作成の調査ガイド)
- The National Archives「Script for National Archives UFO files – August 2009 podcast」
- NBC News(AP通信)「Britain’s latest UFO files raise new puzzles」(2009年)
- The Black Vault「The Halt Memo – The Rendlesham Forest Incident」
- Ian Ridpath「The Rendlesham Forest UFO case」
- Ian Ridpath「Rendlesham Forest UFO explained – the original article」(The Guardian 1985年1月5日掲載の記事の再録)
- Ian Ridpath「Rendlesham Forest UFO – the witness statements」
- Sky HISTORY「What happened at the Rendelsham Forest Incident, Britain’s answer to Roswell?」
- East Anglian Daily Times「Key player in Rendlesham UFO saga, Colonel Charles Halt, returns to Suffolk to tell story」
- East Anglian Daily Times「Suffolk’s alien mystery: What happened in Rendlesham Forest in 1980?」
- Great British Life「The story behind the 1980 UFO sightings at Rendlesham Forest」
- U.S. National Archives「Unidentified Flying Objects – Project BLUE BOOK」
- Chance Heritage Trust「Orfordness Lighthouse」
- Forestry England「UFO trail at Rendlesham Forest」
アイキャッチ画像:U.S. Air Force photo by Maj. Dennis A. Guyitt(パブリックドメイン、Wikimedia Commons経由) 事件の4か月ほど前の1980年9月に撮影された、ベントウォーターズ基地とウッドブリッジ基地の第81戦術戦闘航空団のA-10攻撃機です。事件とは関係のない参考写真です
この記事は公開時点の情報をもとにまとめています。研究や調査は日々進んでいるため、新しい発見で内容が変わることがあります。誤りに気づいた方は、コメントで教えていただけるとうれしいです。


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