イラン空軍の戦闘機が追った謎の光 1976年テヘランUFO事件とは

イラン空軍の戦闘機が追った謎の光 1976年テヘランUFO事件とは UFO・UAP
NASA/Karen Nyberg 2013年7月21日に国際宇宙ステーションから撮影された、夜のテヘランとその周辺です。画面の右側の雲の下には、カスピ海の沿岸の町の明かりが見えています。事件当時の写真ではありません

2026年9月20日の夜、イランの首都テヘランの空を色とりどりの光が動く動画がSNSで広まりました。光の正体は分かっていませんが、50年前のほぼ同じ日にテヘランで起きたUFO事件と重ねて語る声も出ました。ただし、2つを結びつける証拠はありません。

その事件とは、1976年9月19日の未明、テヘランの夜空に現れた明るい光を、イラン空軍の戦闘機2機が追いかけた「テヘランUFO事件」です。アメリカの情報機関の文書に詳しい記録が残っています。この記事では、記録から分かることと、語られている説を分けて整理します。

概要

事件が始まったのは、1976年9月19日の午前0時半ごろです。テヘランの市民からの通報をきっかけに、当時のイラン空軍は、戦闘機F-4ファントムIIを2機、続けて緊急発進させました。

2機とも、物体に近づいたときに計器や無線が使えなくなったと報告しています。この出来事は、テヘランにあったアメリカの国防武官事務所が電文にまとめ、アメリカ国防総省の国防情報局(DIA)などに送りました。

アメリカ空軍は、約7年前の1969年にUFO調査のプロジェクト・ブルーブックを終えていました。この事件は、それとは別に、情報機関の報告として政府の中に伝えられたことになります。

詳しくはこちら:プロジェクト・ブルーブックとは?米空軍が17年続けたUFO調査

確かな事実として分かっていること

ここからは主に、国防武官事務所がDIAへ送った電文の内容です。電文自身が、F-4のパイロットの一人との会話から得た情報だと断っていて、出来事のすべてが確かめられたわけではありません。

市民の通報と将官の判断

9月19日の午前0時半ごろ、イラン空軍の司令所に、テヘランの市民から4本の電話がかかってきました。空に奇妙な物体が見えるという通報で、鳥のような物体だと言う人もいれば、明かりをつけたヘリコプターだと言う人もいました。しかし、その時間に飛んでいるヘリコプターはありませんでした。

連絡を受けた空軍の将官は、はじめは市民に、ただの星だと答えたといいます。それでも、メヘラーバード空港の管制塔と話したあと、自分で空を確かめました。星に似ていて、それより大きく明るい物体が見えたため、F-4を向かわせると決めました。

1機目:近づくと計器と無線が止まった

午前1時30分、1機目のF-4が空軍基地を飛び立ち、テヘランの北へ向かいました。物体はとても明るく、約110キロメートル(70マイル)離れた所からも見えたといいます。

ところが物体に近づくと、F-4はすべての計器と無線を失い、パイロットは追跡をあきらめて引き返しました。機体が向きを変えて物体から離れると、計器と無線は元に戻ったといいます。

2機目:ミサイルを撃とうとした瞬間

午前1時40分には、2機目のF-4が発進しました。後ろの席の乗員が、約50キロメートル(27海里)先の物体をレーダーでとらえます。距離が約46キロメートル(25海里)まで縮まると、物体はレーダーの画面で分かるほどの速さで遠ざかり、その距離を保ち続けました。

レーダーに映った反応の大きさは、ボーイング707型の空中給油機くらいでした。目では光が強すぎて大きさが分かりませんでした。青、緑、赤、オレンジの光が点滅し、切り替わりが速すぎて、すべての色が同時に見えたといいます。

追跡を続けていると、元の物体から明るく光る別の物体が飛び出し、F-4に向かってまっすぐ猛スピードで迫ってきました。パイロットはAIM-9ミサイルを撃とうとしましたが、その瞬間に兵器の操作盤が止まり、無線も使えなくなりました。

パイロットは旋回しながら急降下して逃れようとしました。飛び出してきた物体はしばらく後をついてきたあと、元の物体のところへ戻り、ぴったりと合流したと記録されています。

地上に降りた光

その後、元の物体から、さらに別の物体が真下へ高速で降りていきました。無線と操作盤が戻っていた乗員は、大きな爆発を予想して見守りました。しかし物体は静かに地上に降りたように見え、2から3キロメートルほどの範囲を明るく照らしたといいます。

同じころ、メヘラーバード空港に近づいていた旅客機1機も、無線が使えなくなったと記録されています。ただし、何かを見たという報告はありませんでした。

翌日の現地調査

明るくなってから、F-4の乗員はヘリコプターで、物体が降りたと思われる場所へ向かいました。そこは干上がった湖の跡で、何も見つかりませんでした。

ところが周りを飛ぶうちに、はっきりした電波の発信音をとらえました。音が最も強かった場所にあった小さな家の住人に聞くと、前の晩に大きな音と、稲妻のような明るい光があったと話したといいます。電文は、機体と現場で放射線を調べているところだと伝えています。

政府の中枢に届いた報告

電文はDIAのほか、ホワイトハウス、国務長官、中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)などにも配られました。DIAの評価の用紙では、この情報の価値は最も高いランクとされ、とても優れた報告で、UFO現象を研究するための条件をすべて満たす典型的な例だという趣旨の評価が書かれています。

理由として、別々の場所から多くの人が見たこと、空軍の将官など信頼できる目撃者がいたこと、レーダーでも確かめられたことが挙げられています。3機の航空機で似たような電磁的な影響が出たこと、物体が並外れた動きを見せたことも理由の一つです。

ただし、評価の用紙に、物体の正体についての結論は書かれていません。これらの文書は、のちにアメリカの情報公開法にもとづく請求で公開されました。

語られている主な説

本当に正体不明の物体だったという見方

軍の将官やパイロットが目撃し、レーダーでもとらえられ、アメリカの情報機関の文書まで残っている。こうした記録の多さから、この事件はUFO研究家の間で、とりわけ信頼できる事例の一つとされてきました。

2007年11月12日には、ワシントンのナショナル・プレス・クラブで、各国の元パイロットや政府関係者が、アメリカ政府にUFOの調査を求める記者会見を開きました。ここでは、事件で2機目に乗っていたとされるイラン空軍の元パイロットが、UFOにミサイルを撃とうとしたが操作盤が動かなくなったという趣旨の体験を話したと報じられています。

木星と機体の故障だったという説

一方、アメリカの懐疑派のジャーナリストは、最初に見えた明るい光は、当時テヘランの空で明るく輝いていた木星ではないかと指摘しました。整備にかかわった技術者の話として、F-4にはもともと電気系統のトラブルがあったことも挙げ、計器や無線が止まったのは機体の不具合だという見方を示しています。

懐疑的な立場のアメリカの科学ポッドキャストによると、UFO研究家の多くは、木星の方角が合わないとしてこの説を退けてきました。そのポッドキャスト自身は、目撃の一部は木星だった可能性が高いとしつつ、すべての正体を決めるほどの情報はないとしています。

今も残る謎

この事件の記録の多くは、当事者から聞いた話をまとめたものです。今回調べた範囲では、レーダーの画面や計器の記録そのものは見つかりませんでした。

電文は、情報が入りしだい続報を送ると結ばれています。しかし、放射線の調査の結果や、電波の発信音の正体を伝える公開文書も見つかりませんでした。

レーダーの反応の大きさは反射した電波の強さを表すもので、物体の実際の大きさとは限らないという指摘もあります。2機のF-4の不具合が物体と関係していたのか、偶然だったのかも、決め手がないままです。

まとめ

1976年9月19日の未明、テヘランの空に現れた明るい光を、イラン空軍のF-4戦闘機2機が追いました。アメリカ側の電文によると、2機とも物体に近づくと計器や無線が使えなくなり、2機目はミサイルを撃とうとした瞬間に兵器の操作盤が止まりました。

DIAはこの報告を高く評価しましたが、正体の結論は出していません。木星や機体の故障という説もありますが、50年たった今も、すべてを説明できる答えは見つかっていません。

僕のひとりごと

僕がこの事件で一番ひかれたのは、通報を受けた空軍の将官が、はじめは星だと答えていたのに、結局は自分で空を見上げたところです。その小さな行動から戦闘機2機が飛び立ち、アメリカ政府の中枢にまで届く記録が残ったと思うと、なんだかドラマみたいだなと感じました。

光の正体は木星だったのかもしれないし、僕たちがまだ知らない何かだったのかもしれません。50年後のほぼ同じ日に、またテヘランの空の光が話題になったのも、不思議なめぐり合わせだと思います。

アイキャッチ画像:NASA/Karen Nyberg 2013年7月21日に国際宇宙ステーションから撮影された、夜のテヘランとその周辺です。画面の右側の雲の下には、カスピ海の沿岸の町の明かりが見えています。事件当時の写真ではありません

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この記事は公開時点の情報をもとにまとめています。研究や調査は日々進んでいるため、新しい発見で内容が変わることがあります。誤りに気づいた方は、コメントで教えていただけるとうれしいです。

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