米政府は宇宙人の技術を隠しているのか 国防総省の歴史報告書

米政府は宇宙人の技術を隠しているのか 国防総省の歴史報告書 UFO・UAP
NASA/Lori Losey 2001年8月に撮影された、NASAの高高度観測機ER-2です。U-2偵察機を改良した機体で、報告書に出てくる1950年代や1960年代のU-2の写真ではありません

アメリカ政府は墜落したUFOを回収し、その技術をひそかに調べている。そんな話は、何十年も前から語られてきました。2023年7月には、アメリカ議会の公聴会でそうした趣旨の証言も出て、日本でも報じられました。

この「政府はUFOを隠しているのか」という問いについて、アメリカ国防総省の全領域異常対策室(AARO)がまとめたのが、2024年3月に公表された歴史報告書です。この記事では、報告書の中身とその後を、確かな事実と説を分けて整理します。

概要

報告書の題名は、日本語にすると「未確認異常現象(UAP)へのアメリカ政府の関わりの歴史的記録についての報告書 第1巻」です。2023会計年度の国防権限法にもとづいて作られ、2024年3月8日に議会に提出されて公表されました。

公開された報告書は63ページで、1945年から2023年10月までを対象にしています。AAROは、2022年7月に国防総省に設けられた、UAPを調べる専門の部署です。

詳しくはこちら:144件中143件が正体不明 米情報機関が出したUFO報告書とは

確かな事実として分かっていること

80年分の記録と、約30人への聞き取り

AAROは、1945年からのアメリカ政府の公式なUFO調査を見直し、機密と公開の両方の資料を調べました。政府が秘密を隠していると話す人など約30人への聞き取りも行い、話に出てきた計画が本当にあるのかを確かめたといいます。

地球外の技術だと確かめた調査はなかった

報告書の一番大きな結論は、アメリカ政府の調査、大学などの研究、公式の検討委員会のどれも、UAPの目撃が地球外の技術だったと確かめたことはない、というものです。目撃の多くは、ふつうの物体や現象の見まちがいだったとしています。

また、アメリカ政府や民間企業が地球外の技術を手に入れ、分解して仕組みを調べる「リバースエンジニアリング」をしているという主張にも、確かな証拠は見つからなかったとしました。

報告書は、空軍のUFO調査「プロジェクト・ブルーブック」が1969年に終わってから、次の調査計画ができるまで約40年の空白があったとしています。

詳しくはこちら:プロジェクト・ブルーブックとは?米空軍が17年続けたUFO調査

「秘密の計画」の正体

聞き取りでは、政府と企業が地球外の機体を持っていて、試験をしているといった主張が出ました。AAROは、話に出てきた計画や担当者、企業、文書を探し出したうえで、それらは実在しないか、地球外の技術とは関係のない本物の秘密の計画の取り違えか、すでに打ち切られた根拠のない計画だったと結論づけました。

聞き取りの相手に、その計画に実際にかかわった人はおらず、目的を思い違いしたのだろうとしています。

実現しなかった計画「KONA BLUE」

話に出てきた計画の一つが「KONA BLUE」です。聞き取りでは、人間ではない生物の回収を隠すための計画だと語られていました。実際は、国防情報局が2009年から2012年まで行い、UFOの調査も含んでいた計画「AAWSAP」の支持者たちが、国土安全保障省に持ちかけた新しい計画でした。

詳しくはこちら:米国防総省が公開した3本のUFO映像と秘密計画AATIPとは

KONA BLUEは、UAPの調査を再開し、手に入れることを期待していた地球外の機体を調べようとするものでした。国土安全保障省では、特別な機密計画として立ち上げる手続きまで進みましたが、最後は上層部に価値がないとして退けられました。報告書は、地球外の機体や遺体が集められたことは一度もなく、推進した人たちがあると思い込んでいただけだとしています。

このほか、ある情報機関の秘密の計画が、2021年に十分な理由もなくUAPのリバースエンジニアリングまで扱うように広げられ、のちに廃止されていたことも分かりました。

報告書は、政府が地球外の技術を調べて議会に隠しているという話の多くは、そう信じる人たちの間で同じ話が回り続ける「循環報告」の結果だとしています。

金属片は地球の合金だった

墜落した地球外の機体から回収されたと主張されてきた金属片も、調べられました。主な成分はマグネシウム、亜鉛、ビスマスで、報告書は、地球で作られた合金で特別な性質もないと結論づけています。

2024年7月には、AAROがオークリッジ国立研究所による分析の結果も公表し、20世紀半ばに行われていたマグネシウム合金の研究と合うとしました。

UFOとまちがえられた偵察機

報告書は、初期のUFOの見まちがいの一部は、当時の新しい技術を見たものだったことはほぼ確実だとしています。その例として報告書が挙げているのが、CIAが開発した偵察機U-2です。

CIAの歴史研究によると、U-2は高さ約1万8000メートル(6万フィート)を飛び、高くても約6000メートル(2万フィート)ほどを飛ぶ当時の旅客機よりはるかに上にいました。銀色だった初期のU-2は、日の出や日の入りのころに太陽の光を反射し、下からは燃えるような物体に見えることがあったといいます。

試験飛行が始まると、旅客機のパイロットや航空管制官からのUFOの報告が大きく増えました。CIA関係者の後の見積もりでは、1950年代後半から1960年代のUFOの報告の半分以上が、U-2などの偵察機の飛行で説明できるとされ、報告書もこの見方を紹介しています。

報告書はほかに、無人機の開発や試験もUAPの目撃につながったことはほぼ確実だとし、1947年のロズウェル事件も秘密の気球計画「モーグル計画」によるものだったとしています。

詳しくはこちら:ロズウェル事件とは?「空飛ぶ円盤回収」発表から始まったUFO伝説

語られている主な説

政府が地球外の機体を隠しているという説

2023年7月26日、アメリカ下院の監視委員会の小委員会が開いた公聴会で、元空軍の情報将校デービッド・グルーシュ氏が、政府は何十年にもわたってUAPの墜落機を回収し、リバースエンジニアリングをする計画を持っていると職務の中で知らされた、という趣旨の証言をしました。ただし、自分で見たのではなく、ほかの人から聞いた話だとしています。AAROの報告書は、こうした主張と食い違う内容だと報じられました。

報告書は信用できないという批判

UFOの情報公開を求める人たちからは、強い批判も出ました。AATIPを率いていたと名乗るルイス・エリゾンド氏は、報告書は不正確で誤解を招くという趣旨で批判しています。

議員の中からも、疑われている国防総省が自分を調べて隠していないと結論づけても意味がない、という趣旨の反発が出ました。

見まちがいと秘密主義という説明

一方、報告書は、政府が何かを隠しているという考えが広まった背景として、UFOを題材にした大衆文化の多さや、秘密の計画の情報がもれてUAPと取り違えられたこと、SNSで同じ話が広まりやすいことなどを挙げています。

今も残る謎

報告書がすべての話に答えを出したわけではありません。AAROは、1966年から1977年に4つの空軍基地の核ミサイル施設にいた元空軍の5人からも話を聞き、UAPを見た、ミサイルの運用に影響が出たといった主張を調べ続けています。解決していない主張の結果は、第2巻で報告するとしています。

第2巻は、2023年11月以降にAAROが得た情報をまとめる予定でしたが、2026年2月の報道では、まだ公表されていないと伝えられています。今回調べた範囲でも、公表は確認できませんでした。

2026年5月には、トランプ大統領の指示を受けて、国防総省がUFOに関する資料の公開を始めました。国防総省は、これらは決定的な判断ができない未解決のケースだと説明しています。

まとめ

2024年3月に公表されたAAROの歴史報告書は、地球外の技術だと確かめた政府の調査はなく、政府が地球外の技術を調べているという主張にも確かな証拠はないと結論づけました。

話に出てきた秘密の計画は、実在しないか、本物の秘密の計画の取り違えなどだったとされます。一方で、核ミサイル施設をめぐる話などは、今回調べた範囲ではまだ公表されていない第2巻に持ち越されたままです。

僕のひとりごと

僕がこの報告書で一番おもしろいと思ったのは、UFOの正体の一部が、実はアメリカ自身の偵察機だったかもしれないというところです。宇宙人の秘密を探していったら国の秘密に行き着くというのは、なんだか皮肉な話だと感じました。

それでも、核ミサイル施設の話のように、まだ答えが出ていないものも残っています。第2巻がいつ出て、そこに何が書かれるのか、僕は気長に待ってみたいと思います。

参考情報

アイキャッチ画像:NASA/Lori Losey 2001年8月に撮影された、NASAの高高度観測機ER-2です。U-2偵察機を改良した機体で、報告書に出てくる1950年代や1960年代のU-2の写真ではありません

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