144件中143件が正体不明 米情報機関が出したUFO報告書とは

144件中143件が正体不明 米情報機関が出したUFO報告書とは UFO・UAP
NASA Goddard ニュージーランドで打ち上げられ、空を上っていくNASAの科学観測用の大型気球です。報告書に出てくる気球とは関係のない参考の写真です

2021年6月25日、アメリカの情報機関をまとめる国家情報長官室が、UFOについての報告書を公表しました。軍などから寄せられた正体不明の物体の報告を、アメリカ政府が正式に取りまとめたもので、日本でも報じられました。

集められた報告は144件。そのうち正体がはっきり分かったのは、しぼんでいく大きな気球の1件だけでした。この記事では、報告書に何が書かれていたのか、その後どうなったのかを、確かな事実と説を分けて整理します。

概要

報告書の題名は「予備評価:未確認空中現象」です。アメリカ政府は、UFOという言葉の代わりに「未確認空中現象(UAP)」という言葉を使っています。

対象になったのは、2004年から2021年までに、アメリカ政府の情報源から寄せられた144件の報告です。データの大部分は海軍からの報告でした。情報を集めて分析したのは国防総省の「UAPタスクフォース」で、報告書は国家情報長官室の担当者とともにまとめられました。

一般に公開された報告書は9ページの短いものです。議員向けには、機密扱いの付属文書も渡されたと報じられています。

確かな事実として分かっていること

報告書が作られるまで

アメリカでは2017年に、国防総省がひそかにUFOを調べる計画を持っていたと報じられました。2020年4月には、海軍の戦闘機が撮影した3本の映像を、国防総省が正式に公開しています。

詳しくはこちら:米国防総省が公開した3本のUFO映像と秘密計画AATIPとは

2020年6月、アメリカ上院の情報特別委員会は、こうした遭遇について国防総省と情報機関に分析を求めることを決めました。当時この委員会を率いていたのは、マルコ・ルビオ上院議員です。

この要求は、2021年度の情報機関授権法の「委員会コメント」に書き込まれました。2020年12月27日、トランプ大統領が新型コロナウイルスの経済対策を含む大型の予算法案に署名したことで、180日以内に報告書を出すという期限が動き出しました。

海軍が中心のタスクフォース

UAPタスクフォースは、2020年8月に国防総省が設置を発表した組織で、海軍が中心となって動かしました。目的は、アメリカの安全保障の脅威になるかもしれないUAPを見つけ、分析し、記録することとされました。

144件のうち、正体が分かったのは1件

報告書によると、144件の報告のほとんどは、最近の2年間に寄せられたものでした。海軍が2019年3月に報告の決まった手順を作り、それが知られるようになったためです。空軍も2020年11月に、同じ手順を取り入れました。

144件のうち、正体を高い確信をもって特定できたのは1件だけでした。それは、しぼんでいく大きな気球でした。残りの報告は、データが限られていたため説明がつかないままだとされています。

複数のセンサーがとらえていた

144件のうち80件は、レーダー、赤外線、可視光のカメラ、兵器が目標を追うための装置、目視など、複数の手段でとらえられていました。報告書は、多くのUAPが複数のセンサーに記録されていることから、報告されたUAPの大部分はおそらく実際にある物体だろうとしています。

説明のつかない動き

18件の出来事(報告の数では21件)では、変わった動き方や飛び方が報告されていました。上空の風の中で止まっているように見えた、風に逆らって進んだ、急に向きを変えた、かなりの速さで動いた、それなのに推進の仕組みが見当たらなかった、といった内容です。

報告書は、ごく一部のデータでは、UAPが加速したり、探知されにくくする工夫をしていたりするように見えるとしました。また少数の例では、軍用機のシステムが、UAPの目撃にともなう電波を処理していたといいます。

ただし報告書は、これらがセンサーの誤りや、ニセの信号でだまされた結果、見た人の思い違いである可能性もあり、さらに厳密な分析が必要だとしています。

11件のニアミス

パイロットがUAPとニアミスをしたという記録は、11件ありました。報告書は、UAPは明らかに飛行の安全にかかわる問題で、アメリカの安全保障にとっての課題にもなりうると述べています。

目撃は、アメリカ軍の訓練場や試験場の周りに集まる傾向もありました。ただし報告書は、そうした場所は注目されていて新しいセンサーも多いことなどから、データに偏りが出た可能性があるとしています。

報告をためらわせる偏見

報告書は、データ集めの壁として、センサーの限界とともに、社会や文化の中にある偏見をあげました。UAPを見たり、報告したり、仲間に話そうとしたりしただけで、けなされたという声が、パイロットや分析担当者から寄せられていたといいます。評判を気にして黙ってしまう人も多いかもしれないとしています。

語られている主な説

報告書が示した5つの分類

報告書は、UAPにはおそらく1つの説明ではまとめられないとしました。そのうえで、正体が分かれば、次の5つのどれかに当てはまるだろうと考えています。

  • 空中の浮遊物:鳥、気球、趣味で飛ばすドローン、ビニール袋のような空を漂うごみなど
  • 自然の大気現象:氷の結晶や水分、温度のゆらぎなど。赤外線やレーダーに映ることがある
  • アメリカの政府や企業が開発しているもの:秘密の計画による機体など
  • 外国の敵対勢力のシステム:中国やロシア、ほかの国、政府以外の組織が使う技術
  • その他:正体を見きわめるのに、さらなる科学の知識が必要になるかもしれないもの

秘密の機体や外国の偵察だという見方

UAPの正体は、アメリカ自身の秘密の機体や、外国の偵察機ではないかという見方もあります。しかし報告書は、アメリカの開発中の機体が報告のどれかに当たるとは確かめられなかったとしています。外国の情報収集やライバル国の大きな技術の進歩を示すデータも、今のところないとしました。

宇宙人の乗り物だという説

UFOといえば、宇宙人の乗り物を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし報告書には、宇宙人や地球の外から来たものについての記述はありません。報道でも、宇宙人の証拠は見つからなかったと伝えられています。

「その他」の分類についても、報告書は科学の知識がさらに必要になるかもしれないと書くだけで、それが何なのかには触れていません。

今も残る謎

報告書のあとに起きたこと

報告書が公表された日、国防総省はタスクフォースの仕事を正式な形にするための計画づくりを指示しました。2021年11月にはタスクフォースを引き継ぐ新しい組織ができ、2022年7月には、それが「全領域異常対策室(AARO)」に改められています。

2023年1月に国家情報長官室が公表した2022年版の年次報告では、報告の数は合わせて510件に増えました。新しく加わった366件のうち、163件は気球やそれに似たもの、26件はドローンやそれに似たもの、6件は鳥や天気、空を漂うごみなどとされました。それでも171件は、正体が分からないままでした。

答えの出ていない問い

今回調べた範囲では、2021年の報告書で変わった飛び方が報告された18件や、説明がつかなかった143件の一つひとつが、その後どう判断されたのかを示す公式の発表は確認できませんでした。

データが足りないから説明できないのか、それとも今の知識では説明できないものがあるのか。報告書が「予備評価」と名乗っているとおり、答えはまだ出ていません。

まとめ

2021年6月25日に公表されたアメリカの国家情報長官室の報告書は、2004年から2021年までの144件のUAPの報告を取り上げました。正体が分かったのは気球の1件だけで、80件は複数のセンサーでとらえられ、18件では変わった動きが報告されていました。

報告書は宇宙人については何も書いていません。その後、調査は全領域異常対策室(AARO)に引き継がれましたが、正体の分からない報告は今も残っています。

僕のひとりごと

僕がこの報告書で一番おもしろいと思ったのは、144件のうち正体が分かったのが、しぼんでいく気球の1件だけだったところです。「分からない」が143件と聞くとワクワクしますが、その多くはデータが足りなくて判断できなかったというのが、報告書の正直なところなのだと感じました。

それでも、政府がUFOの話を正式な報告書にまとめ、パイロットたちが偏見を恐れて黙ってしまう問題まで書いたのは、大きな一歩だと思います。その後の報告では気球やドローンとされたものが多かったように、データが集まるほど答えに近づいていくのだろうと、続きが楽しみになりました。

参考情報

アイキャッチ画像:NASA Goddard ニュージーランドで打ち上げられ、空を上っていくNASAの科学観測用の大型気球です。報告書に出てくる気球とは関係のない参考の写真です

この記事は公開時点の情報をもとにまとめています。研究や調査は日々進んでいるため、新しい発見で内容が変わることがあります。誤りに気づいた方は、コメントで教えていただけるとうれしいです。

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