2006年11月、アメリカのシカゴにあるオヘア国際空港で、奇妙な出来事が起きました。空港で働く航空会社の職員たちが、ターミナルの上に浮かぶ円盤のような物体を見たと報告したのです。
物体は雲を突き抜けて消え、雲には丸い穴が残ったといいます。この記事では、「オヘア空港UFO事件」と呼ばれるこの出来事について、確かな事実と語られている説を分けて整理します。
概要
事件が起きたのは、2006年11月7日の夕方です。オヘア国際空港にあるユナイテッド航空のゲート「C17」の上空に、灰色の円盤のような物体が浮かんでいるのを、パイロットや整備士、管理職など、同社の職員10人余りが見たと伝えられています。
この出来事は、約2か月後の2007年1月1日、地元の新聞シカゴ・トリビューンの報道で広く知られるようになりました。アメリカの連邦航空局(FAA)は、気象現象だったという見方を示し、調査は行いませんでした。
確かな事実として分かっていること
ゲートC17の上に浮かんだ物体
最初に物体に気づいたのは、午後4時15分ごろ、ゲートC17から出発しようとしていたユナイテッド航空の旅客機のそばで働いていた、地上の作業員だったとされています。その後、ほかの職員たちも空に浮かぶ物体を見ました。
目撃した人たちによると、物体は暗い灰色で輪郭がはっきりしていて、音を立てずに低い雲の下に浮かんでいました。大きさの見積もりは、直径2メートルほどから7メートルほど(6から24フィート)まで、人によってばらつきがあります。
雲を突き抜けて消えた
物体は数分間浮かんだあと、突然すごい速さで上へ飛び上がり、雲の中に消えたといいます。当時の雲の底は、地上から約580メートル(1900フィート)ほどと低い状態でした。
目撃者たちは、物体が消えたあとの雲に、くっきりとした丸い穴があき、その向こうに青空が見えていたと話しています。
レーダーには何も映っていなかった
一方、空港の管制塔では、誰も物体を見ていませんでした。FAAによると、管制官は何も見ておらず、レーダーを調べても変わったものは映っていなかったといいます。
管制塔にかかってきた電話
FAAとユナイテッド航空は、はじめ、この出来事についての情報はないとしていました。しかし、シカゴ・トリビューンが情報公開法にもとづいて記録の公開を求めたところ、当日、ユナイテッド航空の管理職が管制塔に電話をかけ、円盤のような物体について尋ねていたことが分かりました。
FAAも、ユナイテッド航空の管理職から、回転する円盤の形をした物体についての電話を受けたことを認めています。ユナイテッド航空の広報担当者は、会社としてこの日の出来事を話し合った記憶はないと説明しました。一方でトリビューンは、同社が職員にこの件を話さないよう求めていたと伝えています。
異例の反響を呼んだ記事
2007年1月1日のトリビューンの記事は、大きな反響を呼びました。ネット版は100万回以上読まれ、何日にもわたって同紙のウェブサイトで最もよく読まれた記事になったと伝えられています。その後、アメリカのほかの報道機関も、この出来事を次々に伝えました。
語られている主な説
空港の明かりや穴あき雲だったという説
FAAの広報担当者は、あの日は雲が低く、空港にたくさんの明かりがあるという条件がそろっていて、明かりが雲に当たると不思議なものが見えることがある、という趣旨の説明をしました。FAAの別の担当者は、雲に丸い穴があく「穴あき雲」だった可能性を挙げたと伝えられています。
穴あき雲は、氷点下でも凍らずにいる「過冷却」の水の粒でできた雲の中で、氷の粒が生まれたときにできます。氷の粒がまわりの水蒸気を取りこんで成長し、水の粒が蒸発して、雲にぽっかり穴があくのです。NASAによると、穴あき雲は中くらいの高さにできる「高積雲」によく見られ、過冷却の水の粒を含む雲の中を飛行機が通ることが、そのきっかけになるとされています。
穴あき雲では説明できないという反論
これに対しては、当時の雲の中の気温は華氏48度(約9度)で、氷点下でなければできない穴あき雲にはなりえない、という指摘も出されました。
また、目撃されたのは雲の穴だけではなく、その前に雲の下に浮かんでいた物体でした。明かりの反射や雲の穴で、この物体の目撃まで説明できるのかという疑問も残っています。
正体不明の飛行物体だという説
目撃したのが、飛行機を見慣れたパイロットや整備士などの航空の専門家だったことから、本当に正体の分からない物体がいたのではないかと考える人もいます。目撃者の中には、飛行機でもヘリコプターでも気象観測用の気球でもなかったと話した人もいたと報じられています。
今も残る謎
FAAは正式な調査をしておらず、物体の正体は分かっていません。職員の誰かが写真を撮ったという話も伝えられていますが、そのような写真は公開されていません。
レーダーに映らず、管制塔からも見えなかった物体を、なぜ地上の職員たちははっきりと見たのか。雲の穴は本当に物体があけたのか、それとも別の理由でできたのか。どちらの疑問にも、決定的な答えは出ていません。
まとめ
オヘア空港UFO事件は、2006年11月7日の夕方、シカゴのオヘア国際空港で、ユナイテッド航空の職員たちがゲートの上に浮かぶ灰色の円盤のような物体を見たと報告した出来事です。物体は雲を突き抜けて消え、雲には丸い穴が残ったとされています。
FAAは気象現象だったという見方を示し、調査をしませんでした。穴あき雲などの説明に対しては反論もあり、物体の正体は今もはっきりしていません。
僕のひとりごと
僕がこの事件で一番気になったのは、目撃したのが空港で毎日飛行機を見ている人たちだったというところです。空のプロたちが、見たことのないものだと感じた物体とは、いったい何だったのでしょうか。
一方で、会社も役所もはじめは情報がないとしていたのに、新聞が記録を調べて電話のやりとりが明らかになったという流れには、記者の粘り強さを感じました。雲にぽっかりあいた穴の話は、想像するだけで少しぞくっとします。
参考情報
- Columbia Journalism Review「Chi Trib Readers Seem to Believe」(2007年)
- The Spokesman-Review(AP通信)「FAA skeptical of UFO report at O’Hare」(2007年1月2日)
- Government Executive「FAA: No UFO at O’Hare」(2007年1月2日)
- AviationPros(The Providence Journal)「Just what was that Object Hovering Overhead at O’Hare?」(2007年2月)
- Simple Flying「Did You Know Chicago O’Hare Airport Had A Reported UFO Sighting In 2006?」
- The Black Vault「The Vault Files: 2006 O’Hare International Airport UFO Sighting」
- NASA Earth Observatory「Making Sense of Holes in the Clouds」(2024年2月26日)
- 家庭画報.com「ぽっかり穴のあいた空『穴あき雲』とは? どんな時に出合えるのでしょう」(荒木健太郎 監修)
アイキャッチ画像:NASA Earth Observatory image by Michala Garrison, using MODIS data from NASA EOSDIS LANCE and GIBS/Worldview 2024年1月30日に、アメリカのフロリダ州の西の沖、メキシコ湾の上空で撮影された「穴あき雲」の衛星画像です。事件とは関係のない参考の画像です
この記事は公開時点の情報をもとにまとめています。研究や調査は日々進んでいるため、新しい発見で内容が変わることがあります。誤りに気づいた方は、コメントで教えていただけるとうれしいです。


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