太陽系の惑星は、どれもコマのように自転しながら太陽の周りを回っています。地球の自転軸も少し傾いていて、それが季節を生んでいます。
ところが天王星は、自転軸が約98度も傾いていて、ほとんど横倒しのまま回っています。なぜこんな姿になったのでしょうか。この記事では、分かっている事実と、語られている主な説を整理します。
概要
天王星は、太陽から7番目の惑星です。太陽の周りを約84年かけて1周し、1日の長さは約17時間です。
NASAによると、天王星は赤道が軌道に対してほぼ直角になっている唯一の惑星で、自転軸の傾きは97.77度です。地球の傾きが23.4度、天王星とよく似た大きさの海王星が約28度なのと比べると、その傾きは飛び抜けています。
なぜここまで傾いたのかは、まだはっきりとは分かっていません。昔、大きな天体がぶつかったという説が有力とされていますが、ほかの考えも出されています。
確かな事実として分かっていること
ハーシェルが見つけた惑星
天王星は、1781年3月13日、イギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルが、バースにあった自宅の庭で望遠鏡を使って見つけました。初めは彗星ではないかと考えられましたが、のちに新しい惑星だと分かりました。
自転軸は約98度傾いている
天王星の自転軸は、軌道の面に対して約98度傾いています。そのため天王星は、まるで転がるボールのような姿で太陽の周りを回っています。
極では約42年も昼や夜が続く
横倒しで回っているため、天王星は太陽系で最も極端な季節を持つ惑星とされています。太陽の周りを回るうちに、北極と南極が順番に太陽のほうを向くからです。
極のあたりでは、約42年間ずっと太陽の光が当たり続けたあと、約42年間ずっと夜が続くとされています。1980年代にボイジャー2号が訪れたときは、南極がほぼ太陽の方向を向いていました。
その後、2007年に太陽が赤道の真上に来る時期を迎え、今は北極が太陽のほうへ傾きつつあります。NASAによると、2028年には北半球が夏至を迎える見込みです。このころは北極が地球のほうを向き、環を正面から見られるとされています。
衛星や環も一緒に傾いている
天王星の大きな衛星は、傾いた天王星の赤道の上を、自転と同じ向きに回っています。環も、赤道の面にほぼそろっています。
つまり、天王星だけでなく、衛星や環をふくむ全体が横倒しになっているのです。この点は、傾いた理由を考えるうえで大切な手がかりになっています。
ボイジャー2号が見た天王星
天王星を訪れた探査機は、今もNASAのボイジャー2号だけです。
詳しくはこちら:ボイジャー1号・2号の今 打ち上げから49年、星間空間を旅する探査機
ボイジャー2号は1986年1月24日に天王星に最も近づき、新しい衛星や環を見つけました。さらに、天王星の磁場の軸が自転軸から約60度も傾き、中心からもずれていることが分かりました。
語られている主な説
巨大な天体がぶつかったという説
最も有力とされているのが、太陽系ができて間もないころ、天王星に大きな天体がぶつかって横倒しにしたという説です。
2018年、イギリスのダラム大学などの研究チームは、ぶつかる天体の重さや角度を変えながら、50通り以上の衝突をコンピューターで再現しました。その結果、地球の2倍以上の重さの天体がかすめるようにぶつかれば、天王星を横倒しにしても大気の多くは残ると発表しました。
この研究では、衝突でできた内部の構造が、中心からずれた天王星の磁場にかかわっている可能性も指摘されています。
衝突は1回ではなかったという説
ただし、1回の衝突ですべてを説明するのは難しいという指摘もあります。2011年、フランスのニースにある天文台の研究者が率いる国際チームは、天王星が1回の衝突で一気に倒れた場合、その後にできる衛星は天王星の自転と逆向きに回ってしまうという計算結果を発表しました。
実際の衛星は自転と同じ向きに回っています。そこでチームは、天王星には少なくとも2回、大きな天体がぶつかったのではないかと考えました。
衝突の蒸気から衛星が生まれたという説
日本の研究者たちも、この謎に取り組んでいます。2020年、当時東京工業大学の教授だった井田茂さんや、京都大学などの研究チームは、巨大衝突のあとに天王星の衛星ができるまでを計算したモデルを発表しました。
天王星の衛星は、すべて合わせても天王星の1万分の1ほどの重さしかなく、大きな衛星が外側にかたよっています。これまでの巨大衝突説では、この特徴をうまく説明できませんでした。
チームは、氷が主成分の天王星に地球の1倍から3倍ほどの重さの天体がぶつかると、飛び散った物質が蒸発して水蒸気の円盤になると考えました。円盤が広がって冷えるあいだに大部分は天王星に落ち、残ったわずかな氷から、今の衛星の並び方が再現できたといいます。
昔あった大きな衛星が傾けたという説
一方で、巨大衝突がなくても天王星を傾けられたかもしれないという説もあります。2022年、フランスのパリ天文台の研究者らは、かつて天王星に大きな衛星があり、その衛星が少しずつ遠ざかっていくあいだに、重力の働きで天王星の自転軸をゆっくり傾けたという考えを発表しました。
計算では、傾きが80度を超えると衛星の動きが不安定になり、最後は天王星にぶつかって消え、自転軸は傾いたまま残るとされています。ただし研究チーム自身も、天王星にそれほど大きな衛星があり得たのかは、これから確かめる必要があるとしています。
ほかの惑星の重力でゆっくり傾いたという説
天王星が今より太陽の近くでできたとすれば、ほかの惑星の重力の影響で、少しずつ傾いた可能性も調べられています。ただ、2021年にアメリカのメリーランド大学の研究者が発表した研究では、この仕組みだけで98度まで傾けるのは理想的な条件でも難しく、やはり巨大衝突が必要だと結論づけています。
今も残る謎
天王星を横倒しにしたのが、1回の大きな衝突なのか、何回かの衝突なのか、それとも衝突以外の仕組みなのかは、まだ決着がついていません。
よく似た大きさの海王星の傾きが約28度にとどまっていることも、考えるべき点の一つです。なぜ天王星だけがここまで大きく倒れたのかは、はっきりしていません。
答えに近づくには、天王星をもう一度、詳しく調べる必要があります。2022年にアメリカで発表された、今後10年の惑星探査についての科学者たちの提言では、天王星を回る探査機と、大気に飛び込む探査機を組み合わせた計画が、大型探査の最優先とされました。内部の重力などを詳しく測れば、巨大衝突があったのかを確かめる手がかりになると期待されています。
当初は2031年から2032年ごろの打ち上げが考えられていましたが、予算の都合でそれより遅れる見通しで、打ち上げの時期はまだ決まっていません。
まとめ
天王星は、自転軸が約98度も傾いた、横倒しの惑星です。衛星や環も一緒に傾いていて、極では約42年も昼や夜が続きます。
傾いた理由としては、巨大な天体の衝突説が有力です。ただ、衝突の回数や、昔あった衛星が傾けたという説など、議論は続いています。いつか天王星を回る探査機が、この謎に答えを出してくれるかもしれません。
僕のひとりごと
僕が天王星の話でいちばんおもしろいと思うのは、惑星だけでなく衛星や環まで、まとめて横倒しになっていることです。大きな衝突で倒れたのか、昔の衛星にゆっくり倒されたのか、どの説にもドラマがあって想像がふくらみます。極で42年も昼が続く景色は、地球に住む僕にはなかなか思い描けません。いつか探査機が天王星を回る日が来たら、その答え合わせを見届けたいです。
参考情報
- NASA「Uranus: Facts」
- NASA「Neptune: Facts」
- NASA「Earth: Facts」
- ESA「The 23.4 tilt」(2026年6月3日)
- コトバンク「天王星」
- コトバンク「海王星」
- Royal Museums Greenwich「The Discovery of Uranus」(2020年3月13日)
- Herschel Museum of Astronomy「FAQs」
- NASA「Hubble Monitors Changing Weather and Seasons at Jupiter and Uranus」(2023年3月23日)
- ESA/Hubble「Uranus (November 2014 and November 2022)」
- ESA/Hubble「Uranus (November 2022)」
- ウィスコンシン大学マディソン校「Hubble captures rare, fleeting shadow on Uranus」(2006年8月31日)
- Guinness World Records「Longest period of daylight/darkness on any planet in the Solar System」
- NASA「Hubble Observes the Planet Uranus」(1994年)
- NASA「35 Years Ago: Voyager 2 Explores Uranus」(2021年1月22日)
- Astronomy「Jan. 24, 1986: Voyager 2 flies by Uranus」
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- Sci.News「Massive Protoplanet Hit Young Uranus, Caused It To Tilt, Study Says」(2018年7月3日)
- Astronomy Now「Computer simulations confirm massive impact knocked Uranus off kilter」(2018年7月6日)
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- Morbidelli ほか「Explaining why the Uranian satellites have equatorial prograde orbits despite the large planetary obliquity」(arXiv、Icarus 219巻、2012年)
- 東京工業大学「大蒸発の果てに小さな衛星群が残る 天王星の衛星形成を再現する理論モデルを構築」(2020年4月13日)
- 京都大学「天王星の衛星形成を再現する理論モデルを構築 -大蒸発の果てに小さな衛星群が残る-」(2020年4月8日)
- ScienceDaily「Mysteries of Uranus’ oddities explained」(東京工業大学の発表、2020年4月28日)
- Saillenfest ほか「Tilting Uranus via the migration of an ancient satellite」(arXiv、Astronomy & Astrophysics 668巻、2022年)
- Astronomy「Astronomers have a new theory for why Uranus spins on its side」(2022年10月17日)
- Rogoszinski, Hamilton「Tilting Uranus: Collisions versus Spin-Orbit Resonance」(The Planetary Science Journal 2巻、2021年4月28日)
- Spaceflight Now「Robotic mission to Uranus receives top priority in decadal survey」(2022年4月19日)
- Scientific American「NASA’s Uranus Mission Is Running Out of Time」(2023年3月30日)
- Lunine, Feldman ほか「Four coupled reasons why Uranus is so interesting」(EGU General Assembly 2025)
- Simon ほか「Uranus Orbiter and Probe: Mission Challenges and Concept Updates Since the Origins, Worlds, and Life Decadal Survey」(The Planetary Science Journal 7巻、2026年6月4日)
- Universe Today「Flexible Launch Opportunities for the Uranus Flagship Mission」
- NASA Photojournal「Uranus in True and False Color」(PIA00032)
アイキャッチ画像:NASA/JPL ボイジャー2号が1986年1月17日に撮影した画像から作られた天王星です。左は人の目で見た色に近づけたもの、右は極のあたりのかすかな模様を強調したものです
この記事は公開時点の情報をもとにまとめています。研究や調査は日々進んでいるため、新しい発見で内容が変わることがあります。誤りに気づいた方は、コメントで教えていただけるとうれしいです。











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