フランスの宇宙機関が続けるUFO調査 GEIPANの50年近い歩み

フランスの宇宙機関が続けるUFO調査 GEIPANの50年近い歩み UFO・UAP
NASA 2012年10月3日、国際宇宙ステーションの乗組員が撮影した、ヨーロッパの無人補給機ATV-3が大気圏に再突入して燃え尽きるときの煙やちりです。大気圏に再突入する人工物は、GEIPANに寄せられる目撃情報の正体の一つです。記事に出てくる出来事の写真ではありません

空に見えた不思議な光の正体を、国の宇宙機関がまじめに調べてくれる。そんな国があります。フランスです。

フランス国立宇宙研究センター(CNES)には、1977年からUFOの目撃情報を調べ続けている組織があります。今の名前はGEIPANです。この記事では、その歩みと調査で分かったこと、今も残る謎を整理します。

概要

GEIPANは、フランス語の名前の頭文字をとったもので、日本語にすると「未確認航空宇宙現象の研究・情報グループ」といった意味です。CNESの施設がある南フランスの都市、トゥールーズを拠点にしています。

仕事は、空で見られた不思議な現象の目撃情報を集めて分析し、記録として残し、結果を一般に知らせることです。目撃情報は、GEIPANのウェブサイトのほか、憲兵隊や民間航空の当局に出された届け出を通して寄せられます。

GEIPANは「UFO」という言葉をあまり使いません。目撃されるものが物体とは限らないため、「PAN(未確認航空宇宙現象)」という、より中立な言葉を使っています。

確かな事実として分かっていること

1977年に始まった調査

CNESによると、1960年代から70年代のフランスでは、空の不思議な現象の届け出が、憲兵隊などの公的機関に寄せられていました。そこでCNESは1977年、目撃情報を扱う組織「GEPAN」を作りました。

組織は名前を変えながら続いてきました。1988年には、大気圏に再突入する人工衛星やロケットの破片などを見張る部署「SEPRA」に引き継がれ、2005年に今のGEIPANになりました。

アメリカ空軍のUFO調査「プロジェクト・ブルーブック」は、1969年に終わっています。その8年後に、フランスは国の宇宙機関の中に調査の窓口を作り、今も続けているのです。

詳しくはこちら:プロジェクト・ブルーブックとは?米空軍が17年続けたUFO調査

1990年、フランス中で見られた光

正体が分かった有名な例が、1990年11月5日の夜の出来事です。フランスの広い範囲で、空を横切る光が目撃されました。AFP通信によると、1000人近くが光を見たと届け出たといいます。

正体は、大気圏に再突入して燃えながら落ちていくロケットの破片でした。旧ソ連のロケットの一部だったとされています。宇宙から落ちてくるものも、UFOと見間違えられることがあるのです。

2007年、調査資料をネットで公開

2007年3月、CNESは約30年にわたって集めてきたUFOの調査資料を、ウェブサイトで公開し始めました。事例は約1600件、書類は約10万ページ、目撃者の証言は約6000件にのぼります。憲兵隊の調書や目撃者のスケッチ、写真なども含まれていました。

当時の責任者は、資料をまるごとネットで公開するのは世界で初めてだという趣旨を話しています。公開されると見に来る人が殺到し、数時間でサーバーがダウンしました。なお、目撃者の名前などは伏せられています。

4つの分類と今の数字

GEIPANは、調べた事例を4つに分けています。Aは「正体がはっきり分かったもの」、Bは「おそらく分かったもの」、Cは「情報が足りなくて分からないもの」、そしてDは「しっかり調べても分からないもの」です。

CNESが2026年1月に紹介した数字では、2025年の終わりまでに記録した事例は3200件あまり。そのうちAとBが合わせて66パーセント、Cが31パーセントで、Dは3パーセントほどにとどまります。

正体として多いのは、大気圏に再突入する宇宙ごみ、国際宇宙ステーションや人工衛星、空に放たれたランタン、霧やオーロラといった気象、写真に写り込んだ光の反射などです。

新しく分かった正体

2022年の秋からは、旅客機のパイロットから、飛行中に不思議な光の点を見たという報告が寄せられるようになりました。GEIPANは、特定の条件のときに太陽の光を受けて光った人工衛星だと結論づけています。2024年のインタビューで責任者は、スペースX社の通信衛星「スターリンク」をめぐるパイロットの報告に取り組んでいると話していました。

小さなチームで続く調査

GEIPANは大きな組織ではありません。トゥールーズのCNESで働くのは3人ほどで、全国にいる十数人のボランティアの調査員が支えています。寄せられる目撃情報は年に数百件で、そのうち100件から150件ほどをくわしく調べています。

調査には、憲兵隊やフランス航空宇宙軍、民間航空の当局、フランス気象局、フランス国立科学研究センター(CNRS)などが協力しています。軍や警察、科学の専門家などでつくる委員会が運営を見守り、2024年1月には責任者が交代しました。

2021年には、1970年代のGEPANを舞台にしたドラマ『OVNI(s)』が、フランスの有料テレビ局カナル・プリュスで放送されました。CNESによると、作り手たちは実際のGEIPANを訪ねて準備したそうです。

語られている主な説

Dの事例は地球の外から来たものだという見方

3パーセントほどのDの事例こそ、地球の外から来た乗り物の証拠ではないか。UFOに関心のある人の間では、そうした見方も語られてきました。懐疑派の研究者たちは、かつての責任者の中にも、個人としては一部が地球外の人工物だと主張した人がいたと指摘しています。

ただし、GEIPANは地球外から来たという証拠を示していません。2007年の公開のときも、当時の責任者は、資料は宇宙人がいることを証明するものでも、いないことを証明するものでもないという趣旨を述べていました。

調べ方に問題があったという批判

一方で、調査のやり方そのものを批判する声もあります。2009年、フランスの懐疑派の研究者3人が、Dに分類された主な事例を見直した結果をアメリカの雑誌に発表しました。金星や月の見間違い、空軍のアクロバット飛行チームの訓練、子どもの風船などがDとして残っていたと指摘しています。

2007年の公開のころ、Dは全体の4分の1ほどを占めていました。その後、GEIPANは古い事例を見直し、説明がついたものの分類を改めてきたと伝えられています。Dの割合は、今では3パーセントほどまで下がっています。

今も残る謎

説明のつかない事例として特に有名なのが、1981年1月8日に南フランスの村トランザンプロヴァンスで起きた出来事です。男性が、口笛のような音とともに、直径2.5メートルほどの円盤のような物体が近くに降り、すぐに飛び去ったと証言しました。

現場には跡が残り、採取された土や植物をGEPANが分析しました。AP通信によると、地面が熱せられた跡や、近くの植物の変化が見られたとされています。2007年の報道では、満足のいく説明は見つかっていないとされていました。

ただし懐疑派の研究者は、現場を調べた憲兵は車のタイヤの跡だと見ていたと指摘しています。この出来事をどう評価するかは、今も意見が分かれています。

Dの事例は、今も100件ほど残っています。その中に本当に未知の現象があるのか、それとも情報や当時の技術が足りなかっただけなのか。新しい知識によって、古い事例の謎が解ける可能性もあります。

まとめ

フランスでは1977年から、国の宇宙機関CNESの中の組織がUFOの目撃情報を調べ続けています。今のGEIPANは、資料をネットで公開し、調べた事例をAからDの4つに分けています。

ほとんどの目撃には、人工衛星や再突入する宇宙ごみ、気象などの説明がつきます。しっかり調べても分からないDの事例は3パーセントほどで、その正体はまだ分かっていません。

僕のひとりごと

僕がGEIPANの話で一番いいなと思ったのは、正体の分からないものを分からないまま、きちんとDとして記録に残しているところです。宇宙人だと決めつけるのでも、見間違いだと切り捨てるのでもない、その間の立ち位置がとても誠実に感じました。

批判を受けながら古い事例を見直していく姿勢も、科学らしくておもしろいです。残った100件ほどの謎の中に、いつか新しい発見が隠れていたらと想像すると、ワクワクします。

参考情報

アイキャッチ画像:NASA 2012年10月3日、国際宇宙ステーションの乗組員が撮影した、ヨーロッパの無人補給機ATV-3が大気圏に再突入して燃え尽きるときの煙やちりです。大気圏に再突入する人工物は、GEIPANに寄せられる目撃情報の正体の一つです。記事に出てくる出来事の写真ではありません

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