イギリス国防省のUFOファイル公開と、UFO窓口が閉じた理由

イギリス国防省のUFOファイル公開と、UFO窓口が閉じた理由 UFO・UAP
Takeaway(CC BY-SA 3.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/ 、Wikimedia Commons経由) 2008年11月8日、タイ北部のチエンマイの北にあるサンサーイ郡で開かれた仏教の行事で、夜空に放たれたたくさんのスカイランタンです。イギリスで目撃が急増した原因の一つとされたものと同じ種類のランタンですが、記事に出てくる目撃の写真ではありません

空に見えた不思議な光を、国の防衛を担う役所に知らせる。イギリスでは50年以上にわたって、そんな窓口が開かれていました。国防省のUFO窓口、通称「UFOデスク」です。

国防省は2008年から2013年にかけて、この窓口などが集めてきた記録を、国立公文書館を通じて次々と公開しました。そしてその途中の2009年、窓口そのものを閉じています。この記事では、ファイルから分かったことと、窓口が閉じられた理由を整理します。

概要

イギリス政府は1950年代のはじめから、UFOの目撃情報を集めてきました。冷戦の時代、空に現れた正体の分からないものが、よその国の航空機ではないかを確かめるためです。

2008年5月、国防省は保管していたUFOのファイルの公開を始めました。公開は10回に分けて行われ、最後のファイルは2013年6月に公開されています。国立公文書館の資料によると、合わせて200あまりのファイル、約5万2000ページにのぼります。

確かな事実として分かっていること

チャーチル首相も気にした空飛ぶ円盤

イギリス政府がUFOを本格的に調べ始めたのは、1950年のことです。国防省の科学顧問の働きかけで、軍の情報担当者による小さなチームが作られました。チームは1951年に報告書をまとめ、目撃は見間違いや錯覚、いたずらなどで説明できると結論づけています。

1952年には、当時のウィンストン・チャーチル首相が、空飛ぶ円盤の話は何を意味するのか報告するよう、空軍大臣に求めました。返事は、1951年の調査で結論は出ていて、その後も考えは変わっていないという内容でした。

5年ごとに捨てられていた記録

その後もイギリス政府は目撃情報を集め続け、1959年から2007年までに記録された報告は1万1000件を超えます。ただし1967年までは、UFOのファイルは一時的な関心事にすぎないとして、5年ごとに捨てられていました。そのため、1960年代のはじめより前の記録の多くは残っていません。

情報公開がきっかけになった全面公開

2005年にイギリスで情報公開法が施行されると、UFOは国防省への開示請求が特に多いテーマの一つになりました。こうした請求が相次いだこともあり、国防省は、ファイルをまとめて国立公文書館に移し、誰でも見られるようにすることにしたのです。

最初に公開されたのは、1970年代の終わりから1980年代にかけての報告などでした。当初は3年ほどの予定でしたが、公開は5年がかりになりました。ファイルには、一般の人からの手紙や警察などからの報告、国会での質問への答えなどが含まれています。

なお、「イギリスのロズウェル」とも呼ばれるレンデルシャムの森事件のファイルは、国立公文書館の資料によると、これより前の2001年に公開されていました。2008年に国防省は、問い合わせへの返事の中で、この事件はもう終わったものと考えているという趣旨を伝えています。

詳しくはこちら:レンデルシャムの森事件とは?米兵が森で見た光と今も続く論争

3倍にふえた目撃情報

国防省には、目撃情報を受け付ける電話(留守番電話)とメールアドレスがありました。電話の窓口は、1997年に設けられたものです。

報告の数は、2000年から2007年までは年に平均150件ほどでした。それが2008年には約2倍に、2009年には約3倍の600件あまりにふえています。国立公文書館によると、1978年以来の多さでした。

急増の原因の一つと見られたのが、結婚式などで夜空に放つスカイランタンの流行です。ゆっくり動くオレンジ色の光の列を、初めて見た人がUFOだと思ったようです。目撃は夏に多く、犬の散歩やバーベキューの最中に空を見上げた人からの報告がよくありました。

中には、キャンプ中にUFOに犬と車とテントを持っていかれたという男性の報告もありました。UFOについて教えてほしいと手紙を書いた子どもには、窓口から空軍のグッズが送られています。

2009年、窓口の閉鎖

2009年11月、当時の国防大臣に、窓口の仕事を大きく減らすよう求める文書が届けられました。50年以上の間、国防省に寄せられた目撃で、宇宙人の存在やイギリスへの軍事的な脅威を示すものは一つもなかったこと。目撃を記録して調べても国防の役に立たないのに、作業がふえて人手を取られていることが書かれていました。

これを受けて国防省は、2009年12月1日で、目撃情報を受け付ける電話とメールアドレスを閉じました。UFOの報告に対応すると、国防の仕事から人手や予算がそれてしまうという説明です。節約できるのは年に4万ポンドあまりで、担当の職員は別の仕事に移りました。

窓口の最後の2年分の記録は、2013年6月21日に、25のファイル、約4400ページとして公開されています。

語られている主な説

本当の証拠は隠されているという見方

国立公文書館によると、国防省には、公開された書類は政府の本当のねらいを隠すための見せかけだと訴える手紙も届いています。窓口の閉鎖が準備されていたころには、UFOについての真実の公開を政府に求める運動も起きていました。

こうした見方でよく話題になるのが、チャーチル首相の逸話です。2010年に公開されたファイルに、1999年に一般の人から届いた手紙が入っていました。第二次世界大戦中、任務から戻るイギリス空軍機に正体不明の物体が近づき、チャーチルが秘密にするよう命じたという内容で、書き手の祖父にまつわる、家族に伝わる話だとされています。

ただし、国防省が1999年に調べたところ、この出来事を記した記録は見つかりませんでした。公開に協力した研究者のデイビット・クラーク氏は、人から人へ伝わったうわさのような話で、証拠にはならないと指摘しています。

スカイランタンと社会現象という見方

クラーク氏は、2009年の急増の多くは、スカイランタンを見間違えたものだと考えています。そのうえで、ファイルの公開そのものが人々の関心を高め、報告をふやした面もあるという見方を示しました。UFOは社会現象でもある、という考え方です。

国防省の報告書が示したプラズマ説

国防省は2000年に、イギリスの防空の空域で見られた未確認の現象についての報告書をまとめています。「プロジェクト・コンダイン」と呼ばれる秘密の研究で、情報公開法による請求を受けて2006年5月に公開されました。

報告書は、目撃の多くは航空機や珍しい気象など、知られているもので説明できるとしています。ロイター通信によると、敵意のあるものだという証拠もないとしました。説明のつかない一部については、大気中で電気を帯びたプラズマのような自然現象かもしれないという説を挙げています。

ただし科学誌ネイチャーのニュースは、目撃者に話を聞かず、科学者にも直接は相談していなかったと指摘し、根拠の弱さを批判しています。

今も残る謎

ファイルが公開されても、謎がすべて解けたわけではありません。1967年より前の記録の多くは捨てられ、当時の目撃の全体像はもう分かりません。残った報告の中にも、正体が分からないままのものがあります。

窓口が閉じた後、国防省が目撃情報を受け付けて調べる仕組みはなくなりました。2024年12月にもイギリス政府は議会への答弁で、国防省は2009年からUAP(未確認航空現象)の報告を調べていないと説明しています。同じ答弁では、同盟国などがこの問題に違う形で取り組んでいることにも触れていました。

空の正体不明の光を、国が記録し続けるべきなのか。その問いへの答えは、国によって分かれたままです。

まとめ

イギリス国防省は2008年から2013年にかけて、UFOのファイルを国立公文書館で公開しました。記録からは、目撃の多くが見間違いなどで説明できること、2009年には目撃が急増していたことが分かります。

国防省は、50年以上の間に脅威を示す目撃はなかったとして、2009年に窓口を閉じました。一方で、記録の一部はすでに失われ、正体の分からない報告も残っています。

僕のひとりごと

僕がこの話で一番おもしろいと思ったのは、ファイルを公開したことで、かえってUFOの報告がふえたかもしれないというところです。国が記録を見せるほど、空を見上げる人がふえるというのは、なんだか人間らしくて好きです。UFOについて手紙を書いた子どもに、窓口が空軍のグッズを送っていたという話にも、思わずほっこりしました。窓口が閉じた今、もし僕が夜空にオレンジ色の光を見たら、まずはスカイランタンかどうかを確かめてみようと思います。

参考情報

アイキャッチ画像:Takeaway(CC BY-SA 3.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/ 、Wikimedia Commons経由) 2008年11月8日、タイ北部のチエンマイの北にあるサンサーイ郡で開かれた仏教の行事で、夜空に放たれたたくさんのスカイランタンです。イギリスで目撃が急増した原因の一つとされたものと同じ種類のランタンですが、記事に出てくる目撃の写真ではありません

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